上腕二頭日記

百瀬ひらく

バズりませんか、と彼女は言った

文学フリマで40部売りたい。刷っちゃったから!


実は別名義で学生時代から何回か出たことがある文学フリマ。しかしながら公募のためにアカウントを新規開設した今、フォロワーが全然いない。公募に引っかかることを第一目的に置くのは変えたくない。

一方、ビッグサイトで行われる同人文芸イベント、「文学フリマ東京」まではいまから16日。何が出来るか?


いっぱい、ほら、売り出すやつの続きもカクヨムに書いて、読んでもらうんだ。カクヨムに載せても、カドカワさんのコンテストには応募できるみたいだし!


そう気炎を上げた2時間後にスマホが鳴る。メンタルがおしまいになった、タスクの爆増で。何かというと、転園希望が通ったお知らせである。双子を育てる身で変なタイミングで保育園に入ったため、遠くの園しか空いておらず、えっちらおっちら大人の足で20分、歩き出したらベビー二人の足で何分かかるんだこりゃ、そういった理由で転園願いを出していたのだが、なぜ今、よりによって今月希望が通るんだ……一年間落ち続けていた園でもうほとんど諦めていた。絶対寝なくなるし泣き叫ぶのが目に見えている。両立、頑張らなきゃ……。嬉しさよりも面倒さが先に立つ。


そんな状況を、電話で友人に相談していた。皐月さんはインターネットに詳しい。仕事がそれ系らしい。

「バズればいいんですよ」

と彼女は言った。

「話題のツイートを引用して、私見を述べれば良い」

そう簡単に言ってくれるけれど、事故的なもの以外で20いいねつくことすらないんだ、こっちは、と洗濯物を畳みながら答える。


彼女によると、わたしのツイートがバズらないのは前後関係が1ツイートでわからないことによるものらしい。確かにあんまり説明してない、排泄みたいにツイートしてる。

「説明をきちんとして、その上で文才を見せればいいんですよ、綺麗な表現は書けるでしょう」

例としてこんなツイートを引用できませんか、と教えてくれる。お前の言いたいことでいい、あっている話題を探せと。離乳食を作りながら頭がクラクラしてくる。私今日、何時に起きたんやった?言われてることなんもわからん、助けてくれ。

「大体メンヘラ起こして叫びつづけている時にしか出てこないんだ、綺麗な表現なんて!」

と叫んでから気がついた。これ、「人物描写を別でメモすると長い小説が書ける」ことと、もしかして一緒か?説明不足を補うだけでかなり表現は伝わりやすくなる。ちょうど文フリに出すアレは、初めて別でメモを書いてから加筆したものだ。


そもそもいつもはこう、なんかこう書くと気持ちいい気がする!あはははは!!みたいな状態にならないと書けず、それがためにだいぶ遅筆だったのだが、人物設定を別で手帳にずらずら書き出すことで、エピソードが追加できるとこれまた別の友人に泣きついて教えてもらった。生まれて初めて、正気で書いたのだ。一万字予定のものが二万四千になった。やったぜ。


とは思ったものの、ひとつの理解が生じたところで別にバズるでもなく、悲しいかな、平和な朝を迎えている。せめてその流れを書いておいたら誰か読んでくれねえかな、もったいないな、という気持ちが湧き、書きながら麦茶を沸かしているわけである。

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