暴走エンジェルズ 〜ケンカ上等!アイドル道〜
星空モチ
【本編】
「アイドルってなんだろ?」🤔
私、長島亜紀、22歳。群馬県の奥深くで生まれ育ち、幼少期から山猿のように駆け回ってきた。
山々に囲まれた土地で、日が落ちれば星空がキラキラと瞬く。そんな自然豊かな場所で、私は野生児として成長した🌄
母ちゃんは早くに死んじまって、親父は酒浸り。学校じゃ「山猿」って呼ばれてた。だから中学からは不良の道を歩み始めた。山育ちの身体能力と勘の鋭さで、いつの間にかレディース「紅蓮華組」の総長になってた👊
バイクで山道を爆走し、夜な夜な喧嘩に明け暮れる。でも、高校卒業と同時に「この先どうすんだ?」って壁にぶち当たった。
「このままじゃダメだ」
深夜、廃墟となった校舎の屋上から見た星空が、妙に眩しくて💫
そんな時、SNSで見かけた「暴走エンジェルズ」のオーディション。「地下アイドル?なにそれ、食えんの?」と思いつつも、「東京行くチャンスか」と応募した。
オーディション当日。原宿の小さなスタジオ。私の前に立ったのは、派手なメイクの女たち🎀
「あんた、アイドルやったことある?」
「ねーよ」
沈黙。
「歌とか踊りは?」
「キャンプファイヤーで熊撃退する時の太鼓は叩けるけど」
またも沈黙。そして、爆笑😆
「ねぇ、この子面白くない?」
「過去の経歴は?」
「レディース総長」
「まじ?」
三人の顔がパッと輝いた。
「採用!」
なんでだ?と思いつつも、翌週には東京の狭いアパートに引っ越し、「暴走エンジェルズ」の新メンバーになっていた。部屋は6畳一間。東京の夜空には星が見えないことが、やけに寂しかった🌃
「アタシ、アイドルに向いてんのかな」
鏡に映る自分は、顔つきは険しいままで、髪は茶色く染め上げ、爪は長く伸ばし、ピアスは七つ。これがアイドル?そもそもアイドルってなんなんだ?
初日のレッスン。他のメンバーは、元ギャルの美咲、元引きこもりの香織、元コスプレイヤーの葵。みんな「元」がつく。私は「元ヤン」。ここは何かの更生施設か?🤨
「よろしく」と言いながら、私の中で沸き起こる違和感。でも、あの街には戻れない。
レッスンで踊る私の姿は、まるで熊と格闘してるよう。メンバーは笑うけど、でも私は諦めない。山で学んだ忍耐力で、何度も何度も練習した。
そして初ライブ。客は十人もいない。でも、山の頂で叫んだ時のような解放感があった🎤
「オラァ!一緒に盛り上がってけろ!」
客席が凍りついた瞬間。
これが、私と「暴走エンジェルズ」の始まりだった。ケンカ上等、これからどうなるかわからないけど、私はここで自分の居場所を見つけようと思った。
そして、私にはまだ知らない。この選択が、どれだけ大きな波紋を広げていくのか—— 📱
*
初ライブから一週間。練習漬けの日々が続いていた🔥
「亜紀ちゃん、そこはもっと可愛く手を振るの!」
プロデューサーの志村さんの指示に、眉間にシワを寄せる。可愛く?何それ?山では通じない言葉だった。
「こうか?」
拳を振り上げると、スタジオ中に笑いが起きた😂
「もういいわ。あなたはそのままで…個性的でいいから」
志村さんは諦めたように首を振る。
翌日のライブは、秋葉原の小さなライブハウス。客席には30人ほどのオタク風の男性たち。熱気ムンムンというより、カメラのレンズがキラキラ光る不思議な空間📸
「いよいよだな」
楽屋で、メンバーの美咲が鏡の前で念入りにメイクをしていた。元ギャルだけあって、手つきが器用だ。
「化粧、手伝ってやろうか?」
「えっ…いいの?」
「山で迷彩メイクはやってたから」
山での生存術と美容メイクは違うが、不思議と上手くいった。美咲の顔が明るく輝く。初めて感じた、仲間との一体感だった💄
ステージ上。照明が眩しい。
「暴走エンジェルズ、参上!」
私たちの登場に、客席からは「おぉ〜」という歓声と、「新人?」「ヤンキーみたいな子がいる」というざわめき。
最初の曲「ハートを撃ち抜け!」で、私は間違えて他のメンバーとぶつかった。でも、咄嗟に受け身を取り、回転して立ち上がる。まるで振り付けの一部のように🌪️
「ナイスリカバリー!」
客席から声が飛ぶ。思わず私は親指を立てて応える。それが逆にウケた。
曲の途中、前列で小競り合いが始まった。推しメンを巡る争いか?
「おい、静かにしろ!」
私の一喝に会場が凍りついた。そして…
「カッコいい!」
意外な歓声。この瞬間、私は感じた。ここなら、私のままでいいのかもしれない🌟
ライブ後の物販。初めて「推し」と言う人と握手。その人の手には、私のレディース時代の写真が…!?
「どこで…」
「SNSで見つけました!長島総長、カッコよかったっす!」
戸惑う私に、他のメンバーがクスクス笑う。だが、その笑顔には悪意がなかった。
帰り道、美咲が言った。
「亜紀ちゃん、あなたのおかげで今日は盛り上がったよ」
心の中に、小さな温かさが広がった。明日からまた頑張ろう。でも、あの写真はどこから?不安も残る。
そして私はまだ知らない、明日のライブに現れる"あの人"のことを…😱
*
暴走エンジェルズの活動も一ヶ月が過ぎ、少しずつ客足が増えていた🎭
「亜紀、ツイッターでハッシュタグ立ったぞ!」
プロデューサーの志村さんが興奮気味に見せてくる画面。「#ヤンキーアイドル」というタグが小さなトレンドになっていた。
「これ、チャンスだ!次のライブで新曲『拳で語れ!乙女心』を披露するぞ!」
志村さんの目が輝いている。この一ヶ月で、彼は私の荒削りな個性を否定するのではなく、武器にすることを選んだのだ👊
練習は厳しかった。他のメンバーとの息も合うようになり、特に美咲とは「山猿コンビ」と呼ばれるほど息が合っていた。元コスプレイヤーの葵がデザインした「暴走カラー」の特攻服風衣装も完成。
「これ、着るのか?」
手にした特攻服の背中には「天下無敵」の刺繍。懐かしくて、少し切なくなった📱
SNSでの人気も徐々に上昇。「ヤンキーなのに歌って踊る姿がギャップ萌え」「素顔はめっちゃ怖いのに、笑顔が可愛い」などのコメントが並ぶ。
「これ、褒められてんのか?」
香織が言葉の意味を教えてくれた。ネット用語は難しい💻
ある日のライブ後、一人の少女が物販に来た。眼鏡をかけた華奢な少女。
「あの…長島さん、私…勇気をもらいました」
彼女は震える手で差し出した手紙を私に渡した。
「学校でいじめられてて…でも、長島さんみたいに強くなりたいです」
その瞳に光る決意に、胸が熱くなった🔥
「強さってのはな、拳の強さじゃない。心の強さだ。お前は既に強い」
思わず伝えた言葉。少女の目に涙が溢れた。
楽屋に戻り、手紙を読んだ。いじめの辛さ、逃げ出したい気持ち、そして私のステージを見て「自分もやれる」と思ったこと…。
「なんか、意味あるじゃん、これ」
香織が肩に手を置いた。
「もちろんあるよ。私たちは誰かの希望になれる」
その夜、大きなライブハウスからオファーが来た。チャンスの予感に胸が高鳴る。✨
しかし翌日、SNSで見覚えのある顔を見つけた。紅蓮華組の元メンバー、鈴木ミカ。彼女が「偽物」と私を罵る投稿をしていた。
「本物のヤンキーって名乗るなら、昔の借りは返してもらうわ」
画面の向こうに見える憎悪の眼差し。かつての因縁が、私を追いかけてきた⚡
次のライブの日。会場に入ると、不穏な空気が漂っていた…
*
ライブハウスに漂う異様な雰囲気。客席の後方に、見覚えのある金髪集団が固まっていた🔥
「来やがったな…」
紅蓮華組のミカを中心に、昔の仲間が十数人。彼女たちの冷たい視線が刺さる。
楽屋では志村さんが慌てていた。「SNSで『元ヤンキー詐欺アイドル』がトレンド入り…どうしよう」
美咲が私の肩に手を置いた。「亜紀、大丈夫?」
「ああ…昔の借りは返さなきゃな」💪
ステージが始まり、最初の曲「ハートを撃ち抜け!」を歌い始めた瞬間、後方から罵声が飛んだ。
「偽物!」「裏切り者!」
客席が騒然となる中、私は歌い続けた。しかし二曲目の途中、ミカたちが前に詰め寄り、ついに舞台に上がってきた。
「長島、お前には借りがある。総長の座を投げ出して、こんなことやってんじゃねえよ!」
会場が凍りついた。警備員が駆けつけようとするが、私は手で制した🛑
「借りなら返す。でも、ここじゃない」
マイクを置いて舞台袖へ。メンバーが心配そうに見つめる中、私はミカたちを屋上へ案内した。
「何がしたい?」
「決着をつけに来た。お前が抜けてから、俺たちバラバラになったんだぞ!」
彼女の目に涙が浮かんでいた。そこには憎しみだけじゃない、寂しさがあった😢
「ごめん…でも、このままじゃ先がないって思ったんだ」
「じゃあ私たちはどうすればいいの?」
その言葉で気づいた。彼女たちも、未来に迷っていたのだ。
「一緒に来いよ。お前らの居場所も、きっとあるから」
そのとき、ドアが開き、メンバーと志村さんが現れた。美咲が前に出た。
「亜紀を応援してる人、待ってるよ。特にあの子」👧
小さな少女—前回手紙をくれた少女が、震えながらも勇気を出して立っていた。
「私…長島さんの歌で勇気をもらったんです!」
その一言が、紅蓮華組の女たちの表情を変えた。
舞台に戻った私たち。観客が固唾を飲んで見守る中、私はマイクを握った。
「今日はスペシャルゲストを紹介する。元・紅蓮華組の仲間たち!」
驚きの声が上がる中、ミカたちを舞台に招き入れた🌸
「次の曲は新曲『拳で語れ!乙女心』。彼女たちと一緒に踊るぜ!」
即席で教えた振り付けながら、昔の仲間たちと共に踊る。ぎこちないけど、真剣な表情。客席からは徐々に歓声が。
その光景をSNS生配信していた志村さん。「#真のヤンキーアイドル」のハッシュタグが瞬く間に広がった📱
ライブ終了後、志村さんが興奮気味に駆け寄ってきた。
「大手レーベルからオファーだ!このサプライズ展開に食いついてきた!」
ミカは照れくさそうに言った。「あたしたちも…何かできることある?」
そして三ヶ月後—
私たちはメジャーデビュー。紅蓮華組の元メンバーは「暴走エンジェルズ」の姉妹グループ「紅蓮エンジェルス」として活動を始めていた⭐
あの日撮影された写真をきっかけに私をファンになった少女は、今では公式ファンクラブの中心メンバー。
山では猿と呼ばれ、東京では異端と思われた私。でも今は、自分らしさを武器に輝ける場所を見つけた。
「アイドルってなんだろ?」
最初の疑問への答えが見つかった気がする。それは自分らしく輝きながら、誰かに希望を与えること🌟
山で見た星空のように、一人一人が違う輝き方をしている。私の輝き方は、武闘派アイドル。それでいい。
私、長島亜紀、22歳。元ヤン。現役アイドル。
これからも全力疾走、ケンカ上等!👊
<終わり>
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます