【完結】瓊国後宮怪異譚 無穹の夜を赤星は往く
丹寧
序章
天翔ける星
空を紅い星が駆けた夏の夜に、
満月の横に紅い光が流れるさまは、大層美しかったらしい。流星は瑞兆だから、流れ星を意味する南方の国の言葉を名前にした――父が自慢げにそう語るのを、何度も耳にした。
だが、父について商いに出かけるようになってしばらくすると、その南方の国の出身者に出会った。計都たちと肌の色も、顔つきも違うその男は、計都の名の由来を聞くと、みるみるうちに憐れむような表情になった。
残念ながら、計都は凶兆だ。
そう言った彼と別れて何年経っても、名前に対する引っかかりは消えなかった。そそっかしい父が勢いだけで命名したのは、家族である計都にはまったく違和感のないことだったけれど。
さらに何年か経つと、引っかかりだけでは済まないことになった。
生まれた夜に流れた星より紅い炎が、父母の家も財産も、そして父母たちも焼き尽くしてしまったからだ。
灰燼に帰した家の跡に立ちすくんだまま、計都は夜空を仰いだ。
そうか、と思う。いずれ不幸に突き落とされることは、生まれた日の凶兆――紅い流星がすでに決めていたのだ、と。
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