1人目の話者

ヨモツさん

第1話

「ねー、試しにそこの旧校舎横の坂で友情を試すおまじない占いしなーい?」


ある日の昼休憩で気の強そうな3人の女子高生が集まり1人が唐突にそう言い出す。


「えー何それー?」


「それ、おまじないなの? 占いなの?

どっちよ?」


「え?」


「あ、百合は必要ないかー! アハハ♪」


「確かにー! 百合はあたし達と違うから要らないもんねー?」


「黒井百合様はアタシ達のよーなゲセンな人とは違うもんねー?」


「違っ!? 何でそんな酷い事言うの!?」


気の強そうな少女3人と一緒にいた百合と呼ばれた大人しそうな少女は、何故かハミられていて馬鹿にされ続けた。3人は見ていなかったが、馬鹿にされた彼女の目がうっすら濁り始めていたのを誰も気付いていない。


放課後の部活帰りに旧校舎の隣りにある、およそ200mほどの斜面がそこまで急でもない坂に全員が集まって、百合1人に3人分の荷物を持たせ上のゴール地点まで走らせて待機させた。


「よーし、説明すっぞー?」


「おードンと来〜い」


「まず、【ヨモツさん】って名前でぇ〜あっ! まだ坂のスタート踏んだらダメだよ!?」


「おっと、あっぶなぁい。フライングごめーん♪」


「んも〜スタート揃えたいんだから気を付けてよー?」


「はいはい、次話してよ?」


「しゃーないなぁ。やり方は簡単なのよ。

坂のスタートに立って【ヨモツさんヨモツさん、あたし達の友情は固いですか? 裏切り者がいたら教えてください】って占って欲しい事を唱えて坂を登るだけ。

ただし、ゴールまで一度も振り返ったらダメなの」


と、もっともらしい神妙な顔で説明するも最後にニヤついて雰囲気が台無しに。


「な〜る〜」


「でもそれだけじゃ面白くないと思ってるっしょ?」


「分かるぅ〜? どーせなら走って競走しちゃおうと思ってぇ。

で、1等賞にジュースとお菓子奢るの。とーぜん奢るのは誰か分かってるよね?」


今度はイヤらしいニヤつき顔になって二人を促す。二人も言い出しっぺの思い付きの裏に気付いたのか、同じイヤらしいニヤつき顔になり頷きあう。


「そーだね〜、そこのゴールにいる誰かが奢ってくれるもんね〜」


「友達で仲間なんだから仲間ハズレは駄目だしね〜?」


「そー言う事♪ ゴールしてから奢って貰えばいいから早く始めよ?」


「よーしお菓子とジュースと聞いてヤル気出て来たー!」


「あたしだって負けないんだからねー?」


「そいじゃあ、3人揃って坂のスタートに立ったらさっき説明で言った奴を一緒に言うぞ〜?

あと思い付いた言葉を付け足すから続いて唱えてね?」


「「OK!」」


坂の始まりに3人仲良く並ぶと目を合わせてタイミングを合わせるよう深呼吸を挟み口を開く。


「「「ヨモツさんヨモツさん、あたし達の友情は固いですか? 裏切り者がいたら教えてください」」」

「無事ゴールに到着出来たらお願いを叶えて下さい」


「「!? …無事ゴールに到着出来たらお願いを叶えて下さい」」


3人が唱え終えると坂の周りだけ空気が淀み始めた。肝心の3人は気づかず、付け足された言葉にやいのやいのと喋くっていたが。

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