黒猫と幽霊と呪いと怪異

坂道冬秋

第一話〜黒い服の女~

 私は黒猫である。名前はまだない。私はこの町の色々な場所を徘徊している。


 この町は面白い。他では見れない物が見れたり、聞けない話が聞けたりする。


 今日の私は、この公園の前の道でくつろいでいた。


「今日はいないみたい」

「え?何が?」


 私の前で二人の女がそんな事を言っていた。


「時々、この公園で黒い服の長い黒髪の女性が立ってるの」

「何それ!ちょっと怖くない?」


 女達は、何もない公園を見ながら、そんな事を言っていた。私は知っていた。ここにいる者の事を。


「今日は一人なのね」

「キャ!」


 耳元で聞こえた声に、女は驚いてふらついていた。そして、黒い服の女を凝視する。


 公園の中にいる黒い服の女とは、何メートルも離れている。


 だが、耳元で囁かれたように感じたのだろう。女は恐怖に歪んた顔で走って逃げていた。





 次の日、私は、またこの公園の前にいた。


「え?なんで私この道を通っているの?」


 昨日の女が、そんな独り言を言っていた。おそらく、違う道を通ろうとしていたのだろう。


 だが、この公園の前の道に来てしまっているらしい。


「髪が少し傷んでいるわね…」


 また、女の耳元で声がした。


「ヒッ!」


 女は恐怖の表情で、公園の中の黒い服の女を見る。


 距離は前と同じく離れている。女は公園から逃げるように走り去っていた。





 次の日、私は、またこの公園の前にいた。


「ウソでしょ!なんで私ここにいるの?」


 また、昨日の女が独り言を呟いている。女は周りをキョロキョロと見回していた。


 そして、公園の中の黒い服の女を見て


「ヒッ!」


 と、声にならない声を出していた。


「今日は、カワイイふくそうね〜」


 また、女の耳元で声がしていた。女は振り返らずに走り去っていった。





 次の日、私は、またこの公園の前にいた。


「やっぱり、この道に来ちゃうのね」


 あの女が道の真中で、独り言を言っていた。女は公園の中の黒い服の女を睨みつけていた。


「何を怒っているの?」


 また女の耳元で声がした。公園の中の黒い服の女とは距離がある。


「何なの私に文句でもあるの?」


 女は強気に公園の中の黒い服の女に叫んだ。


「フフ…ありがとう」


 女の耳元には、そんな言葉が聞こえた。その瞬間、視界が大きく変化していた。


 女は公園の中から自分の姿を見ていた。


「ねぇ、大丈夫だった?」


 友達が、その自分の姿をした者に話しかけていた。


「うん、大丈夫!」


 自分の姿をした者は、友達に笑いながら答えている。


「何これ?」


 そう言った時、その女は黒い服を着て立っていた。そして、動く事ができないでいた。


「私、あの黒い服の女になってる」


 その声は、もう誰にも聞こえていなかった。黒猫の私を除いて…








 お読みいただきありがとうございました。


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「猫の悪霊退治」


 https://kakuyomu.jp/works/16818622171517478837






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