─真実─
ANEMONE
番号301室からの脱出
不安と恐怖からの目覚め
服が防がず肌まで感じるようなひんやり冷たい感覚、そして頭から耳に直接語りかけて来るような半狂乱な叫ぶ訴えに、私は振り向かず無視することもできず急いで後ろを振り向いた。
同時に眠りから目覚めたらしい、未だに心臓の鼓動が聞こえて不気味に感じている時に、不意にいつも聞こえてくる様なテレビが喋る音、車が道路を走り抜けて行く騒音がまるっきり聞こえないことに気付く。それほどに静けきっているのかと不気味に感じ周りを見るために手で目を擦り、2度程見る。だけどそこは見たことない部屋の景色が映し出された、どうやら私はこの部屋のベッドの上で眠らされていたらしく、ご丁寧に此処の窓は外から何かのテープ等で意図的に景色が見えない様にされていたことが見渡して分かる。冷汗が一目見れば判るほど染み込んでいる布団、流石にその上に長時間長居するのは不快に感じて、脚を木材で作られた床に向かって伸ばす。冷えた空気が床に溜まっていたのか、片足を床にくっつけた瞬間に、つい小さな驚き声が漏れ、足から頭の頂点に掛けて鳥肌が立った。だけれどもう片足をつけた時にはもう慣れていたらしく部屋の中を一回、二回と落ち着きのない歩きで回って、何かないかと探している。
ふと目に入ってきたクローゼットが気になり、手を伸ばし開けて見ると手紙だけが入った中身が映し出され、私は何故かそれを見て不気味に感じて少し足が竦んでしまった。とりあえず脚を進め勢いのいいジャンプで無事に手紙を取り、すぐに銃声の様な音がなる程にクローゼットを勢い良く閉めた。手に持っている手紙の中身を見ると、
「キッチンでは右
バスタブでは左
トイレでは上
クローゼットでは下」
と自分を見ろと激しく叫ぶ様に大きく書かれていた。
とりあえずこれに従ってまずはと思い、キッチンの方向へと進んでキッチンの右側の方の吊り戸棚の中身を手で探る。つま先立ちギリギリで何かないかと探ると、棚の手が勝手に滑って行く様な触り心地ではなく、凹凸感のある物が手に触れ、力を少し入れてそれを取った。目で見ると思っていた通りそれは画用紙の端を切り取ったものであり「ふと」と書いてあり意味が分からず頭を横に傾げたが、考えても分からないと悟りベッドの上に置いて放置し他の場所を見に行くことにした。
バスタブに繋がる扉を開くと同時に色々な香りが鼻の中へと、まるで此処は自分の家かの様にズカズカと奥に入ってきた。私はその臭いに対して吐き気止まらずに喉から込み上げて、口を両手を組んで何も出ない様に、と祈りながら2分間ぐらい腰を丸めて扉の前に立ち止まっていた。臭いに対して抗体を持ち始めた私は腰を上げ、意を決してタイルの床に脚を一歩進める。できる限り鼻息をせずにバスタブの中に入った私はそこで臭いの原因が分かった。周りには数え切れないようなバスボムの袋が転がっており、その中身は全て風呂の中に突っ込んだようで水死体がずっと放置され溶け込んだような茶色をしており、私の吐き気は限界を達してその中に吐いてしまった。その臭いと現実から全てを背けたくて、風呂栓を手で握って、今出せる全力で引っ張り水を排水口の中へと流し込んだ。喉の気持ち悪さが取れなくて唸っているといつの間にか水が全て流れていったようで、それの代わりの様に袋の中に入ってさっきと同じ様な画用紙があり、私はそれを手に持つとバスタブから一目散に逃げ帰り扉を固く閉め閉ざした。ベッドに戻り袋を開けて中身を取り出すと「の」と書かれており、「ふと」の横に置いて他の所に行くことにした。
次はトイレの方向へと向かい、そこへと繋がる扉を開き、文章に書いてあった通りに上を見上げると私は一歩後退りした。上の吊り戸棚には満杯に積もったトイレットペーパーがあり、余りの迫力の強さに私は驚きと恐怖が向かってきているような感覚に襲われた。どうにかしなきゃと心の隅に合ったのか脚を一歩ずつ忍者の様に進めだし、それに手が届くと生まれたての新生児を扱う様に丁寧に下に置き、その作業が全て終わると謎の達成感に見舞われながらも画用紙を取ることは忘れずに戸棚を手で探るとやはりあったようで、それを取り文字を見ると、次は「ん」と「の」、「ふと」と全く同じ執筆で書かれてあった。トイレから出ると繰り返しているかの事ベッドの上へと置き、最後のクローゼットへと向かっていった。
私は嫌いなものを最後に残していく子供のような考えで、クローゼットを先へ先へと引き延ばしていたがもうここまで来てしまい、後にも先にも引けない状況になってしまったようで。勇気を振り絞って2度目のクローゼットを開くと、他の所よりも簡単に画用紙が見つかってしまい私は少し拍子抜けしてしまったが、今はそれよりもやることがあると思って文字を確認した。最後の紙には「下」と書いてあり、急いでベッドへと向かい文字を文章になりそうな順で並べてみた。「布団の下」と云う文字が紙から浮き上がり、紙を跳ね除けて布団の下を音を立てながら持ち上げて確認し、それは此処の部屋から出る為の鍵だと思った私は鍵を奪い取る。その鍵を大事に握りしめてはしゃぐ子供の様に玄関へと向かって駆け走る。
息が上がって鼻息を荒げながら、鍵穴に鍵を試しに入れてみる。どうやらビンゴだったようで、気持ちのいい扉を開ける音が部屋の隅へと染み込むように響いていく。私はドアノブに手を掛ける、2度目の音が響き渡り閉じていた目をゆっくりと開かせるとそこには外ではなく目が届く距離全てが壁で覆われていた。
次の更新予定
毎週 金・土 21:00 予定は変更される可能性があります
─真実─ ANEMONE @kakkoku
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。─真実─の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます