隣部屋は従妹

マヒカハシ

第1話 従妹と新生活

「これで最後かな」

 今日は母さんと荷物運びをしていた。高校を卒業して大学生になったけど、大学は家からだと遠いから引っ越すことにした。場所は、叔母さんが所有しているマンションだ。

「それで終わりだよ。ちょっと休憩しようか」

 2人でソファに座り休憩する。しばらくしてポンポーンと、インターホンが鳴った。誰だろう?それにしても変わった音だな。母さんが玄関に向かいドアを開ける。

「どうですか来夢らいむさん、終わりましたか?」

 来たのは叔母さんだった。

「どうぞ真木まきさん。今は運び終わったから休憩してたとこだよ」

「そうだったんですね。お疲れ様です。あ、拓夢たくむ君ちょっといいですか?」

「あぁ、はい。いいですよ」

「この部屋を貸すための条件について、もう一度確認しますね」

 そう、実は条件つきで部屋を貸してもらうことになっている。

「まず水道光熱費などは全てこちらが払います」

「ありがとうございます。助かります」

 バイトしなくてよさそう。でも、払ってくれるから節水、節電がんばろう。

「はい。そういった金銭面の心配はしなくていいですよ。その代わりなきのことよろしくお願いしますね」

 凪ちゃんは叔母さんの娘さん。久しぶりに会うから、前みたいに接してくれるか分からない。それでも、凪ちゃんの面倒を見ることを条件に部屋を貸してもらったんだからがんばらないと、って気合い入れるもんでもないか。

「任せてください」

「はい。拓夢君の無理のない範囲でいいので、面倒を見てくださいね」

「分かりました。あ、何か連絡とかした方が良いですか?」

 叔母さんは少し考えて答える。

「大丈夫です。連絡するは大変でしょうし」

「そうですか」

 して欲しいって言われたら、それはそれで何書けばいいか分からないな。

「では、確認が済んだので凪を呼んできますね」

「凪ちゃんに会うの久しぶりだね。前に写真見たけど大きくなってた」

 写真あったの?見てないよそれ。

 ガチャ。

 玄関のドアが開く。そこには、ツインテールの女の子が立っていた。凪ちゃんだ。確か今年で中学2年生。

「こんにちは」

「久し振りー!元気だった?」

「うん。元気だった」

 背が伸びてる。子供の成長は早いな。

「久しぶり」

「たーくん久しぶりー」

 中身は変わってなさそうで安心。

「私は仕事があるので行きますね。拓夢君、今日はしっかり休んでくださいね。来夢さんもお疲れさまでした」

「真木さん、いろいろありがとうございました。うちの子をよろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

 叔母さんは会釈をして外へ出た。

「あ、もうこんな時間か。そろそろ出ないと」

 母さんがスマホで時間を確認する。ここから家まで、車で2時間はかかる。確かにそろそろ出た方が良さそうだ。

 母さんは部屋を隅々まで見て、バッグを持つ。

「見送りはここでいいや。たーくん、しっかり勉強して、ちゃんとご飯食べてね。」

「うん」

「凪ちゃん、たーくんのこと頼んだよ」

「わかったー」

 ははは……。

 ばいばいと手を振ってドアを開ける。

 ……バタン。

 静かになった。部屋がさっきより広く感じる。

 とりあえず凪ちゃんの頭を撫でる。

「おぉー」

 どういう反応なのそれ。まぁ、立ってんのもあれだし。

「ソファ座る?」

「うん」

 ソファに2人で座る。あーでもどうしよ。共通の話題がないから話すことがない。テレビでも見ようかな。

 ギュッ。

「たーくん」

 抱き着いて顔をうずめる。 におい嗅がれてたらちょっと恥ずかしいな。まぁでも、もう少しこのままでもいいか。

 俺は凪ちゃんの頭を撫でながら、今後のことについて考えることにした。

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