第40話
潮導核を抱きながら俺たちは海面に戻った。
濡れた体が風に晒されて冷たかったが、そんなことはどうでもよかった。
俺たちの目の前に広がる海が、確かに新たな表情を見せていたからだ。
「レン様……すごいです。
海が……」
シーナが震える声で言った。
俺も思わず息を呑む。
「変わったな。
この潮、さっきまでと全然違う」
海の色が澄み渡り、星々の光を反射していた。
それはまるで、海自身が新たな命を得たかのようだった。
「レン様……これが、私たちが繋いだ波……」
「そうだ。
これが、俺たちの旅の証だ」
シーナは涙ぐみながらも、笑った。
「もっと、もっと繋ぎましょう!
この海を、命を、全部!」
「もちろんだ。
俺たちの旅は、これからだ」
小舟に戻った俺たちは、帆を張り直した。
潮の流れは優しく、確かに俺たちを次へと誘っていた。
「レン様、どちらに?」
「潮に聞く」
潮導核に手を当てると、すぐに答えが返ってきた。
次は、さらに西。
そこに、新たな出会いが待っている。
「西へ向かうぞ」
「了解です!」
航海の準備を整える間にも、シーナは何度も俺に話しかけてきた。
「レン様、あの遺跡……本当にすごかったですね」
「ああ。
海精たちが残したものだろうな」
「まだ、他にもあると思いますか?」
「きっとある。
この海のどこかに、まだ見ぬ遺跡や、まだ知らない波が」
「楽しみですね!」
シーナの目は輝いていた。
その瞳を見ると、自然と笑みがこぼれる。
「お前、すっかり旅慣れたな」
「レン様のおかげです!」
「いや、元から素質があっただけだよ」
「……そうですか?」
照れたようにうつむく彼女に、軽く頭を撫でてやった。
シーナは嬉しそうに目を細めた。
船は順調に西へと進んだ。
潮も風も、俺たちを歓迎しているかのようだった。
「レン様」
「ん?」
「これから先、どんなに辛いことがあっても……私はついていきます」
「……ああ、頼りにしてる」
シーナは力強く頷いた。
俺も舵を握りしめ、前を見据えた。
「この海を、必ず繋ぐ。
お前と一緒に」
「はい、レン様!」
星空の下、小舟は静かに進み続けた。
まだ見ぬ世界へ、まだ見ぬ波へ。
*
【作者からのお知らせ】
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
第1章はこれで完結となります。
本作は、ドラゴンノベルス中編部門コンテストへの応募のため、いったん更新を停止させていただきます。
もし皆さまからの反響が大きければ、コンテスト終了後に連載を再開する予定です。
応援や感想をいただけたら、とても励みになります!
今後とも、どうぞよろしくお願いいたします!
追放された最弱少年、海龍と契り群島国家を救う〜波と契約した俺の内政&冒険記〜 ☆ほしい @patvessel
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