「人」という字は……。

「人」と言う字は、二人の人が支え合って出来ているのではなく、一人の人がどっしりと構えて立っているだけ、なのだそうですね。

なんとも味気ない。

正解を知った今となっても、前者の「支え合い」説のほうがしっくり来るのは私だけでしょうか。

この説の秀逸なところは、互いの人が平等に支え合っているのではなく、片方が片方を支える構造になっていることです(フォントによっては平等ですが)。しかも小さいほうが大きいほうを支えている。ここが魅力だと思います。

さて。

なぜこんなことを書くかというと、この物語には「人と人との関係」を考えさせる要素がてんこ盛りだからです。登場人物は少ないですが、そのぶん描写が丁寧で、父と息子のやり取りをとてもリアルに書き込んでいます。

支える人と支えられる人。
小さいものと大きいもの。
揺るがないものと不安定なもの。

「人」が境界線を踏み越えたら、一体どうなってしまうのでしょう?

何気ない日常の一幕、親子の対話を追っていくうちに、非日常へ引き込まれます。

父が明かす真実に、戦慄すること間違いなし。ぜひ、ご一読ください。

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