概要
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!「人」という字は……。
「人」と言う字は、二人の人が支え合って出来ているのではなく、一人の人がどっしりと構えて立っているだけ、なのだそうですね。
なんとも味気ない。
正解を知った今となっても、前者の「支え合い」説のほうがしっくり来るのは私だけでしょうか。
この説の秀逸なところは、互いの人が平等に支え合っているのではなく、片方が片方を支える構造になっていることです(フォントによっては平等ですが)。しかも小さいほうが大きいほうを支えている。ここが魅力だと思います。
さて。
なぜこんなことを書くかというと、この物語には「人と人との関係」を考えさせる要素がてんこ盛りだからです。登場人物は少ないですが、そのぶん描写…続きを読む - ★★★ Excellent!!!たかが家族。それ以上でも、それ以下でも……。
非常に、衝撃を受けました。感服いたしました。
できることなら星を10個はつけさせていただきたい、それほどの作品に御座いました。
この作品は、人間の心の本心や、リアルを、冷静に見つめて表現しております。
主人公は、父親ののる車椅子を押しております。
向こうみずで無頼だった父親、しかし、その背中は今や頼りなく、
病気で衰弱しておりました。
この父親と主人公は、会わなかった空白の時間があり、
その時間をゆっくりと埋めていく時間になるはずで御座いました。
父親が、信じられない告白をいたします……。
人間の心は、深いようで脆く、それでいて薄情なのに、やっぱり家族だなんだに縛られ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!母と父。父と息子へ、死を巡る精緻な人間心理
常軌を踏んで進めば、たどらない心の動きが記されています。
しかし本作は、読めば当然のように納得するのです。
優れた筆致で綴られた心理描写が、読む者を結末まで連れて行くのです。
疎遠であった父は病を得て車椅子を使うまでに衰えています。
父の車椅子を押して二人で外出した主人公。
彼はその散策で驚くべき話を父から聞ききます。
そして始まる物語。
本作を読むと主人公と父母、その関係性をぐるぐると考えてしまうことでしょう。
何を思って、そんなことを言っているのか?
どうしてそうなるのか?
心の動き。その来し方行く末。
心霊を描き、人間の心理を示す優れた作品です。
ぜひ御一読ください。
…続きを読む - ★★★ Excellent!!!「自己」と「他者」の境界。どこまでが本当の自分か、という深遠なる問い
色々と考えさせられるテーマの作品でした。
主人公は久しぶりに父親と会う。父はかつて家を出ていき、疎遠な状態にあった。
そんな父がなぜか、母のことを殺害してきたと口にする。
なぜ、父は母を殺したか。
母という人間は、「自分と他者の区切りがしっかりしている人間」だった。自分は自分。他人は他人としてきっちりと分けられ、誰かを自分の一部のように考えたり、誰かの存在を軸にして自分の人生を考えるようなことをしない。
一方で父は、自分と他者の境界を分けるのが下手で、母と一緒にいる中で、どこまでが本当の自分なのかがわからなくなったという。
この父親の持つ葛藤。「アイデンティティ」とか…続きを読む