アポクリファ、その種の傾向と対策【ルナティックフレアと地上の迷い子たち】

七海ポルカ

第1話





 ――ドオオオオオオン!







 激しい水柱が突き立つ。



 緊急速報で始まった【アポクリファ・リーグ】の冒頭。

 衝撃的な映像は【グレーター・アルテミス】全土の街頭スクリーンに直ちに映し出され、街中がどよめいた。


 




 ――キメラ種出たあああああ!


――ここどこだ⁉


 ――アルトナ埠頭あたりじゃないか? 今チラッと凱旋門が映った気がする!


――そうです。メールでも避難警報が出てます!


 ――これ、誰の映像だ


――中継カメラじゃない! 誰のPDAだ⁉


 キメラ種特有の金属的な反響音を含んだ叫び声が響き、

 一斉に映し出された街角の各地のスクリーンに首の長い竜のような顔が映し出されると、まだ歩いていた人々もギョッとして立ち止まる。



 ――でけえ!


――今日は大物


 ――最近すんごいキメラ種騒動多くない?


――多いよな。あとなんで年々出て来る奴大きくなってんだろ


 ――うちのじーちゃんが昔はこんな大きい奴出なかったって言ってたぞ


――そら育ってんじゃないの?


 ――いやでも育ってるならもっと色んな大きさのやつ出て来てもいいだろ……。なんで段々巨大化するんだ


――確かに。なんでここまで大きく育つ前にこいつら発見されないんだろう?


 ――そういう所からキメラ種を巨大化させるアポクリファ能力持った奴がいるんじゃないかって都市伝説が生まれるんだよな。だからある時突然こういう奴が地上に出現する。


――キメラ種って大抵下水とか海から出て来る。奴らは水の中で生きれるんだと思う。


 ――それにしたってなにきっかけでこいつら【グレーター・アルテミス】の表層に地下から出て来るわけ?


――こんなのうようよ地下にいたら発見されていいと思うんだが……。


 ――キメラ種自体の生態も全く今の所謎だからな。ルナティックフレアを受けた突然変異というだけで、こいつらが元々なんの動物だったのかすら分からねえ 突然変異同士が交配を繰り返してこんな異形になって行ったとは聞いたことあるけども 定かじゃない


――どあああああ! 凍ったぞ! 


 ――氷のブレスだ!


――これ、誰の画面⁉


 ドン! と画面が大きく上下に揺れて、一瞬映像に乱れが走った。


 上空に向かってブレスを吐いていたキメラ種の首が歪に折り曲がり、押し潰される。


 ――ライルだ!


 連動するようにアルトナ埠頭へ向いている【バビロニアチャンネル】の設置カメラがその方向を幾重にも画面に映し出す。

 巨大な重力波のドーム型の影が確認された。


――今市街上空リーグの中継ヘリが飛んでった!



『みなさま! 緊急中継でお届けします。

 本日14:20、セントラルセンターに通報が入り、十分後に【人馬宮サジタリウス】市外北西アリスタウンで巨大キメラ種の出現が確認されました。

【グレーター・アルテミス】防衛法に基づき司法局より【アポクリファ・リーグ】所属の特別捜査官に出動要請が発令!

 これより【アポクリファ・リーグ】を開始します! 

 我々も直ちに現場に急行いたします!』


――レミー・オロのスーツの前濡れてるwww

 ――なに零したんだよww

――焦って出て来たんだな


 ――でけー! 


『現状入って来ている情報ではライル・ガードナーが事件派生当時アタックフィールド内に存在し、【Overwhelmオーバーウェルム Strikeストライク】を獲得、すでに戦闘に入っています!

 彼の能力ならば、キメラ種の足止めは出来るはず……街への被害がこれ以上広がらなければよいのですが……』


 ――さては味噌汁零したなオロ


――昼下がりだったからな

 ――やっとお昼休みだったというのに

――キメラ種 出現時間何故あと一時間待てない

 ――レミー・オロ 魂の叫び( `ー´)ノ


『アリスタウン、ディオンテビル付近の下水道から出現した模様です!

 地上に出る時街の一角が崩れ、怪我人も多数出ているとのこと!』


――ディオンテビルってアーリ・ボストンショッピングモール近いんじゃねえか?

 ――うおーい! かなり旧市街でも街中じゃん!


――なんであんなデカい奴が今まで見つかんかなかったんだ??

 ――あんな奴が地下に潜んでると思ったら夜寝れんぞ

――夜っていうか……お買い物安心して出来ん


 ――んでもディオンテビルなら近くにアリスタウン防災センターがある。


――そうか それなら怪我治せる人とか 少しは火を消せる人とかいるな


 ――ちょっと安心した……



  ドオオオオオオオオン!



――全然安心じゃなああああああい!


 ――こいつライルの重力波で失神しねえ!

――舌打ちしたwww

 ――聞こえた\(^o^)/ ライルのこゆとこホント好き!


――アタックフィールドに居合わせたってことはライル、プロテクター無しか!


 ――おあー! とうとうこの時がやって来たー!


――俺なら丸腰でこんな奴と対峙絶対したくない


 ――俺はフル装備でも断る(∩´∀`)∩


――カッコイイ~~~~~! 

 ――いけー! ライル! 


――つい二週間前にキメラ種規制厳罰化したばっかでしょ?

 ――捨てる奴多いからな

――登録申請料もかなり上がったし、三年に一回の飼育許可免許の更新も毎年に変わった

 ――飼えなくなって捨てる奴今後も増えるかもしれんぞ

――なんてことだ

 ――キメラ種飼う奴の気が知れないよ

――もう完全に禁止した方がいいと思う……

 ――だよな


『現場が見えてきました!』


――レミー・オロあんま近づくな 危ないぞ 重力波に巻き込まれて墜落すんなよー

 ――氷のブレスにも気を付けろ


【アポクリファ・リーグ】所属の特別捜査官たちが次々に出動していることが、エントリー画面に表示される名前で確認出来る。

 アプリケーションをダウンロードすればファンもこのエントリー画面は携帯やパソコンで見ることが出来る。【グレーター・アルテミス】全土に散らばる特別捜査官が次々とエントリーして来るのでマップを見ていれば各捜査官が現状どこにいるのかも分かる。優れた能力者によって【グレーター・アルテミス】は広く守られていることを実感出来るため、このエントリー確認画面アプリはファンにも大好評だった。



――でけええええ! ほんと今までどこにいたんだよ!

絶対おかしいって!



 ヘリに乗って、必死に地上の状況を映していたカメラマンが、ハッとしたようにカメラを上げた時、画面を一瞬で駆け抜けて行った。




『来ました! アレクシス・サルナートです!』



 街角から拍手と歓声があがる。


――アレクシス来た~~~~~~~~っ!


 ――もう安心(*´▽`*)ーЗ

――アレク~~~~~!


 ――今日も着の身着のままでカッコいい


――これ【アルカール】のフード付きジャケットですな!?

  かっくいい!!


 ――今【アルカール】社の社員大盛り上がりですわ



 アレクシスのPDA内蔵カメラが地上の景色を上空から映し出す。

 巨獣の尾がアスファルトに打ち下ろされ、砕かれた破片が飛び散る。

 尾の間合いを避け、重力波で吐きつける氷のブレスを対処するライル・ガードナーの姿が映った。


――ライルやっぱ私服じゃねえかよ!

 ――あぶねーっ! 

――よく足止めした! もういいからライル一回離脱して後方支援に入れ! 

  ブレスとかは確かに重力波で潰せるが 尾とかは土壁で防ぐにも限度あるだろ! 危ない!

 ――よく無事だったな~!


――いつもチャラチャラしてるとか言ってごめん

  こいつは体張る時は張る かっこいい


 ――こういう所はさすが元警官だよな~! 


 アレクシスの放った風の斬撃が巨獣の尾を上空から切り落とした。


 ――ようし! 


――ぬああああああ! 氷のブレス飛んで来るぞ! 気を付けろ!

 ――おっし! 弾いた!

――馬鹿め そんなもん我らがアレクシス・サルナートには効かん!!

 ――風の鎧をまとっているのだ✨



 ドン!



――ライルまだ行くか!

 ――奴はこのまま仕留める気


『ライル・ガードナーは攻撃を続けます!』


――プロテクター無しで撃破するとポイント跳ねあがる

 ――そんな美味しいものをわざわざ見逃すはずがない

――【アポクリファ・リーグ】映り分かって来たじゃねえかルーキー

 ――アリア・グラーツの指示だ そうに決まってる

――鬼軍曹ww

 ――奴は金とポイントの亡者


『キメラ種の皮膚が重力波により引きちぎられて行きます! 

 このまま決まるか! ――ああああっ⁉』


 ギャオオオオオン!


 抑え込んだ所からもう一段階能力の巨獣の背の皮膚が切り裂かれ、そこからもう一つの長い首が出現した。


――どああああ! 変化した!

 ――首増えた! 首増えたぞおおおおおおお! なんじゃああああこいつ!


『マジかよ』


――ライルwww

 ――そら言うわ 

――おあああああああ! こっちの首炎のブレス吐いた!


 ――アレクシス! 


『ライル君! 一度離脱を!』


――そうだぞさすがに危ない!


『んなこと言ってる場合じゃねえだろ!』


――ライル一度逃げろ!

 ――なんだこいつの身体どうなってんだ!


『危ない!』


 ――逃げろー! ライル! 


 一つの首を重力波で海面に叩きつけたものの、

 もう一つの首がライルに向けて炎のブレスを吐き付ける。

 ライルの能力はタイムアドバンテージがある分、違う方向からの同時攻撃には対処しにくい。 

 ライルを狙った炎のブレスを、アレクシスが風撃を壁のように展開し、遮断する。


――おわー! アレクシス! 気を付けろもう一本いる!


『これはいけません! 二つの首がそれぞれ自由に動き捜査官達を狙います!

 キメラ種は確かに千差万別ですが、これは過去類を見ない異形です!』


 青い光が放たれて、岩石のような氷の塊が上空で静止していたアレクシスに襲い掛かる。


 ドゴオオオン!


『あああああっ!』


 ――直撃した!


――アレクシス~~~~~~ッ!


 上空で攻撃の直撃を受けたアレクシスが吹っ飛ばされ、

 海面に突っ込もうとしたのを見て、

 街角のスクリーンに集まった人々が悲鳴を上げる。


 しかし身体が海面に突っ込もうした瞬間、体勢を完全に崩した姿のアレクシス・サルナートの身体が白い光を帯びる。

 そして突然ぐわっ、と海の水面が激しく歪み、強く拳で叩きつけられたかのように跳ね返り、上空に水柱となって突き立った。


 水を含んだからこそ目に見えない『風』の動きが、人々の目にもはっきり見えた。


 アレクシスが放った二連の斬撃が、水を激しく巻き込みながらうねり、敵に襲い掛かる。

 一撃目は炎のブレスを吐く首に決まり、裂傷を刻む。

 間髪入れず二撃目もクロスするように同じ場所に決まってそこから首を完全切り落とした。


 ドォン!

      ――ドォン!


 受け身を取らないまま海中に突っ込んだアレクシスと、吹っ飛ばされた巨獣の首が海に数秒遅れて落ちていく。


――ああああアレク―――――――ッ!

 ――大丈夫かああああああっ!!!!!


――首吹っ飛ばした! すげえ斬撃! 今の風の動き見たか⁉ 一直線に叩き切った!


 ――さすがすぎる 

――でも大丈夫か! 


『アレクシスの一撃で二つの首のうち一つが落ちました! 

 ライル・ガードナーが再び重力波を放ちます!』


 ――このキメラ種強い ライルの重力波で失神しねえ!

――いやライルが生身なのもあると思う プロテクターって能力発動の身体へのダメージを軽減するから、普段って自然と能力ってセーブがかかるんだよ


 ――光の強化能力とか、生身で乱発すると危ないって言うもんな

――力暴走すると能力発動しただけで骨が折れたりするらしい

 ――身体が潰れるから本能的に100%の力が出なくなるようになってる

――だからプロテクターと戦闘服を着て来なさいとお母さんいつも言っているでしょう!

 ――偶然現場に居合わせたんだからしょうがないww

――逃げなかっただけ偉い\(^o^)/


 ――言うてる場合か~! ライル単独じゃあぶねえええええ!


――シザああああ! 早く来てくれ!


 ――アレクシス大丈夫か 


――さっき攻撃の力を防御に使えば絶対に海面に突っ込むの回避できたのに::捨て身で反撃をし敵の首を吹っ飛ばすとは~~~~~~~!!!

 ――カッコ良すぎる!! さっきのとこあとで絶対見る!

――無事に済んだらな


 ――いかん!! 重力波が消える!


――最初のインパクトで敵を潰す能力だからな、そんないつまでもは持続して発動できない。

 ――でも闘技場の時かなり連発してたぞ

――規模が違う規模が こいつデカ過ぎる! こいつを叩き潰す出力ってなると、尋常じゃないパワーが必要なんだ


 ――シザー! 早く来てーっ! ライルが危ないーーーーーーっ!


――あっ!



 ドゴオオオオオン!



 重力波が消えた瞬間、巨獣の胴体に一撃が決まった。

 その巨体が吹っ飛び、後ろの建物に突っ込む。


 ――おああああ! 

天秤宮リブラ】! ムニアドナ来た! 

 シザじゃないけど光の強化能力!


『おお! 無茶してんなライル!』


――アイザック先輩到着だあああ!

 

 心配そうに見守っていた街頭スクリーンの前で、歓声が上がる。

 アイザック・ネレスは渾身の力で巨獣を氷結させた。


『長くは持たねえぞ! ラス! 頼む!』


『了解!』


 現場で合流したアイザック・ネレスとムニアドナ・ラスが共闘し、巨獣を仕留めにかかる。

 ムニアドナは光の強化能力を発動し、側の車を持ち上げたまま跳躍すると、凍って身動きが取れない巨獣の顔面にその車を叩きつけた。

 ドォン! と衝撃で車が大破爆発する。

 一度地面に着地して、再びそこにあった電柱を容易く引き抜くと、ムニアドナは力を込めて巨獣の胴体に投げつける。

 矢のように電柱が巨獣の胴体に突き刺さり、雄叫びが上がった。

 よろめいた巨獣の脳天に、ムニアドナは彼女の決め技である必殺の肘打ちを叩き込む。


 光の強化能力者はパワーとスピードを兼ね備えた最強のアタッカーである。


 海に下半身をつけていた巨獣の体が宙に浮き吹っ飛ぶと、数秒後上空のヘリを掠めるほどの巨大な水柱を立てて海に沈んで行った。


『ったく……来るの遅ぇんだよ』


――ライルwww

 ――アイザックよく来た! いいタイミングだ! あぶなかった~! 

――ムニアドナも! ありがとう!

 ――アイザック今日はカッコいいぞー!


『【天秤宮】のムニアドナ・ラスがキメラ種撃破です!』


 水しぶきがあがり、アレクシスが上空に飛び上がった。

 そこから更に安堵の声と拍手が湧き上がる。


――よかった! アレクシス無事だった!

 ――かっこいい~!

――怪我してない! さすがすぎる! 

 ――この人は風の精霊に愛されているからな

――最高 そして全身ずぶ濡れになってもアレクシスはかっこいいな! というか全身ずぶ濡れになると更にかっこいいな!! 

 ――無茶苦茶カッコイイ! あとでさっきの海に突っ込みながらも敵の首吹っ飛ばした所絶対見直す


――ライル一服してるwww

 ――ほんとだ~

――こら不良(^o^)丿


 ――いや 今日はよく頑張った 一服くらいしていい


――ライルのこういうとこホント好き 


 アイザックが、巨獣を撃破したムニアドナと握手をし合い、労い合う。 

 ムニアドナはライルとアレクシスにも声を掛けに行った。

 街に拍手と歓声が湧き上がる。


――すげーキメラ種だったな……


 ――今までで最強だったかも


――危なかった::


『見事特別捜査官が巨獣を倒しました!』


 ――いつからこういう奴出るようになったんだろうなー

――俺たちアポクリファも出現時期正確には特定されてないもんな。

 約二百年前とかは言われてるけどさ

 ――昔からいたけど、差別されてたから力を隠してたから余計正確な時期が分からん


――【グレーター・アルテミス】が独立して、【アポクリファ・リーグ】が認可されて有名になってから、その存在が段々と肯定されるようになって、他の国のアポクリファたちも少しずつそういうことを公表するようになったというからな


 ――そういうコミュニティが近くにあればいいんだけど、全然ないとことかもある。

 そうなると街で一人しかいないアポクリファとか学校に一人しかいないアポクリファとかになることもある。本当に一人なのかは分からんけど、隠して生きてる人も全然他の国にはまだまだいるんだと思う……


――そう考えると【グレーター・アルテミス】やっぱアポクリファ達の聖域だわ。

 まず入国する時からアポクリファだと優待されるもんな。そんなとこ地上のどこにもない。普通面倒臭いアポクリファ用の入国審査受けねばならん。

【グレーター・アルテミス】の場合アポクリファですって言えば笑顔で招き入れてもらえるもんな。



『皆様勇敢な捜査官達に今宵も拍手を――――、えっ⁉』



 聴衆に手を振りながら戻って来たアイザック・ネレスがずっこけるような仕草を見せた。


『なんだよオロ! いいとこなのに! 勝利の余韻にくらい浸らせろ!』


『あっ、も、申し訳ありません! 今速報が! アールブーイ地区に新たなキメラ種が現われたとのこと!』


『えええええええっ! マジで⁉』

『はい! すみません! これからわたくしども現場に急行したいと思います!』

『ちょ、待てよ! 俺の活躍の感じは?』

『第二カメラを置いて行きますので! それでは!』

『うえええええあああ! オロ~~~~~ッ! てめえ次会ったら覚えとけ!』


――アイザックww

 ――ごねるなベテラン。アレクシスはもう行ったぞ


――たった今激しい戦いを制したばかりなのに 何てカッコいいんだ

本当にアレクシスが戻って来てくれて嬉しい!


 ――でもアールブーイって市内だぞ!


――やっぱ捨てとるな!! 捨てとるやつがいるな!!


『ったく……人使い荒い街だぜ……』


 ――ライルwww


――犯罪都市オルトロスの警官がそう言うんだから相当だな我が国


 ――こんな【グレーター・アルテミス】で申し訳ない


『アレ? おまえ何してんの?』

『おっさんバイク借りるわ。俺の、あの橋の向こうにあっから』

『ふざけんな。俺のバイクだろ! 返せよ!』

『ヤダ』


 ブオン! とバイクが走り出す。


『あああああああ! ライルてめーーーーーーーーーーッ!』


――バイクパクられたwww


 ――アイザック先輩www


――ウケる なにこれ

 ――オジサン見せ場だったのに

――勝利の女神はおじさんには結局微笑まなかったか……まあ薄々分かってたけどな

 ――先輩のバイクパクるんじゃねえよライル

――ほんとにコイツいい根性してる\(^o^)/

 ――正真正銘の不良だな……

――ライルのこういう天真爛漫なとこ可愛い

 ――天真爛漫の使い方間違ってるぞおまえ


――身勝手とか 悪童とかいうなふつうこれは……


 ――タバコ咥えたまま他人のバイクを盗んで走り出すとはなんという見事な不良


『アリア・グラーツ! リーグから車寄越せよー!』


――公式無線でなに頼んでんだよ(*´▽`*)

 ――おまえらこれがおっさんの魂の叫びだぞ。よく聞いとけ

――ライル他人のバイクパクったから100ポイントマイナスな


『公式のバックアップ部隊は次の現場行った。一人で帰ってきなさいよ』

『だから俺のバイク盗まれたの! 盗んだのお前がスカウトして来たあの茶髪の不良! だからお前が俺を何とかしろ!』

『タクシーでも拾いなさいよ』

『俺がタクシーに乗れると思うのか⁉』


 ――いやなんのやりとりだよコレwww

――俺がタクシーに乗れると思うのかっていうのもなかなか悲しいセリフだよな


『タクシーが駄目ならバスに乗ればいいじゃない』


――鬼軍曹www


 ――どこのアントワネットのセリフだよ(∩´∀`)∩


『通信切るわよ! キメラ種二連戦なんて初めてだわ!』

『ああああああああっ! グラーツてめーっ!』


――おじさん(笑)

 ――無駄だ視聴率が上がりそうだから鬼軍曹はわくわくしている

――さすがだな

 ――ムニアドナもすでに出発したしアイザックだけ取り残された


――可哀想三分前までカッコ良かったのに

 ――今日頑張ったほう

――仕方ない……誰かアイザックを車で運んでやれんか


 ――私のバイト先、すぐ側のパン屋さんです ボロボロの配達トラックでいいなら乗せてあげられますよ(*´v`*)


――おっ! 全然ありがたい! んじゃアイザック・ネレス市内まで乗せてってやってよ 

 ――いま店長に聞いたら いいですよーって(^o^)丿

――良かったなアイザック 

 ――優しいパン屋さんだな 平気だったら住所載せといてよ 俺買いに行くわ

――私も行く

 ――ありがとうございますー! 

  おススメはサクサククロワッサンとふわふわ蜂蜜アップルブレッドです!

お店はアリスタウン 南東ローシャーのべナセルタワーの角を曲がった所です!

  ちょっと細い路地入りますが、オープンしてる時は路地の入口に小さな看板とクマのぬいぐるみ置いてありますので分かると思います!

  皆さんのご来店お待ちしております!


――www いいね美味しそう 絶対行く


 ――すまんな アイザックを頼むよ


――パン屋さんに感謝しろよなアイザック


 ――話がまとまりつつある(笑)


――じゃ……俺たち【アポクリファ・リーグ】の続き見ないといかんから



 ――まとまった(*´▽`*)



――アールブーイって言ったら全然市内だぞ 大丈夫か?

 ――うちの会社すぐ近くですけど特に今そんな感じしないんだけど……?

 ってああああああああああああああ! 今向こうで火柱が上がった!

 突然!


――どのへん?


 ――工場地帯の方! 今いきなり出た! 警報鳴ってる! こんなの初めて!


――逃げろ! いや街に出ない方がいいのか⁉ どっちだ⁉ 


 ――画面出た! なんだこいつ!


――飛んでる!


 ――ええええええええっ!


――この火柱! ミルドレッドがいる!


 ――飛んでる⁉


――どどどのくらいの大きさ⁉


 ――そんな無茶苦茶大きいわけじゃないけど、なんか飛んでる‼


――なんだコイツ!


 ――ちょっと待て! なんでミルドレッド・フォンテが映ってるんだ

  この画面誰だよ!



『わっ!』


――!


 ――あああああああ‼



――ああああああああああ! ユラ・エンデだああああああああ!


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