風は憤り、吹き荒れる。

「だめだ、見つからない。そっちはどう?」

「こっちも見つからないわね」

男達が帰った後、僕と九尾はイタチを探していた。

ひとまず山にいるので、この山を探してみることにした。

2時間かけたが、見つかる気がしない。

「普通のやり方じゃ見つからないんだろうなぁ…」

「あの人達は散々探した結果、見つからないと判断して私達に依頼したんでしょうね。」

「そこが気になるんだよねぇ…」

普通、ただの動物探しをなんでも屋に依頼するだろうか?

まして、裏サイトに依頼を出しており、前金で50万とかなり怪しい。

そうなると黒いイタチは…。

「超常的存在かもしれないわね。」

「だよなぁ…。」

九尾の言葉に気だるく相槌をうつ。

超常的存在だった場合真っ先に考えなきゃいけないことは、その危険度だ。

今回、依頼人からはそれと言った話は聞いていない。

だからこそ、慎重にならなければならない。

仮に、九尾のように知能が高く人間にも擬態できるなら、見つけることは不可能である。

もしくはかなり獰猛で大暴れするようなら、それはそれで難易度が上がる。

できればどっちのパターンもやめてほしい…。

「大丈夫よ。大暴れしているなら、とっくに超常現象抑制部に捕まえられてるはずだから。」

「まぁ、それもそうか。まだ超常的存在って決まった訳じゃないしね。」

とそんなことを話していたら、スマホが鳴る。

風切?なんの用だろう?

「もしもし、どうした?風切」

「どうした?じゃないよ!学校もう終わったよ?」

「今日って午前で終わりだったんだな」

「昨日先生言ってたじゃん!話ぐらい聞こうよ」

「まぁまぁ落ち着けって…」

かなりお怒りのようだ。

何かしたっけ、僕?

「で、結局なんの用なんだ?」

「ん…、今どこにいるの?」

「は?なんでそんなこと聞いてくるんだ?」

「えと…、学校サボって何してるのかと思って…」

「山」

「え?」

「山にいる」

「どうしてそんなところにいるのよ…」

「気まぐれだよ」

「相変わらず、訳わかんないことするよね…」

はぁ…、という音が聞こえる。

電話の向こうでため息でもついたのだろう。

まぁ、依頼のことは隠さないとだからね。

「白上公園ってわかるよね?」

「家の近くだな」

「え?そうなの?」

なぜか驚く風切。

別に近くだからって驚く必要はないだろ。

「あ…待って今のは忘れて!」

「…?」

急にどうしたのだろうか?

覚えとく程のことではないから忘れはするが。

「とにかく白上公園に来て!」

風切はそう言うと電話を切った。

急にかけて来て、急に切る。

普通なら失礼だぞ…。

さて、白上公園か。

家に帰ろうと思っていたところだったから、ちょうどいい。

向かうとしよう。

「 九尾も来るか?」

「何言ってるの?呼んだ覚えのない人が一緒にいても困惑するだけでしょ。まして私は彼女と面識がないのよ?」

「じゃあ、どうするんだ?」

そう言うと九尾は少し考え、

「…黒いイタチについて何か調べてみるわ」

「わかった、気をつけろよ。特に超常現象抑制部には。」

すると彼女はニッコリと笑う。

「安心して。私は捕まったりはしないから。」

相変わらずの笑顔だ。

他の人には見せない、僕にだけ見せてくれるその笑顔はとても美しい。

見惚れていると、ぽんっ、と肩を叩かれる。

「そろそろ下山しましょ」

先を歩く彼女の後ろ姿を見ながら僕は下山した。


山のふもとで九尾と別れて、僕は白上公園に向かう。

歩いていると街路樹のあたりでガサッと音がした。

近づこうとした瞬間、視線を感じた。

目の前の街路樹から?違う!

僕は素早く右にズレる。

僕がさっきまで立っていた場所には、カナヅチが振りかざされていた。

カナヅチを振り下ろした人物は黒いコートを着ており、顔はフルフェイスのヘルメットを被っており表情は見えない。

まずいな…。

僕の側には九尾がおらず、自分の力でどうにかするしかないようだ。

様子を窺っていると、不審者は声を発した。

「お前が狐か…?」

ヘルメットごしで聞きづらいが、声的に男なのだろう。

「狐?僕の名前は美弧ですが…」

とりあえずとぼける。

相手がなんの目的で僕を襲ったか、探るためだ。

「どうでもよい…。あいつの存在は我々の邪魔でしかない。契約者であるお前には死んでももらう…」

あいつ?

契約者ということは、九尾のことか。

我々の邪魔、とはどういうことだ?

いや、今はこの状況を打破しないといけない。

僕が考えていると、男は一気に距離を縮めカナヅチを上げる。

あ、終わった…。

そう思った時、強烈な風が吹き荒れる。

何かが男にぶつかり、男は気絶する。

風が吹き止むと、そこには僕と男しかいない。

今のはなんだったのだろうか…?

街路樹にいた何かが僕を助けた…?

色々と思うところはあるが、いっこくもはやくここから離れるために僕は白上公園まで走った。

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