07

「課題はまぁたとえば……いや、この際だ。最初のお前たちの課題を伝えよう」


 物々しい先生に、俺たちはごくりと唾を飲み込む――が、一変。


 おどけた顔になった先生が言う。


「決められたドリブル練習を毎日続ける事! これがこの先1ヶ月、10月までの課題だ」


 拍子抜けする課題に、俺はほっと息を吐く。初っ端から脱落、なんてことにはならなそうだ。


「ドリブル練習かー。シュートとかは?」


「もちろん、普通の練習もする。休息日もあるから、その上で、ドリブル練習だけは毎日続けろって事。わかったか?」


「はーい!」


 ハルが元気いっぱいに返事をすると、先生も表情を緩める。


 しかしドリブル練習か……俺はそれなりにやってきたつもりだけど、他の2人はどうなんだろう。


 ……不思議と、下手くそなところは想像できないな。


「よしっ。とりあえず言わなきゃならないことは全部言っちまったし……質問コーナーでもするか。ルールは話せないことを無理に話させようとしないこと。誰にでも質問よし。極力質問には答えてあげること! オーケー?」


「Okay! じゃあまず僕から質問! シノに!」


「あ? 俺かよ……めんどくせぇ」


「バスケ始めたのはいつから?」


 お、それはいい質問だな。


「……3歳」


「3歳!? すげー! 僕は5歳だったよ! イットは?」


「俺? 俺は……6歳かな」


 そうか、今世でバスケを始めて、もう1年間か……。


 しかし俺よりバスケ始めるのがかなり早いな、2人とも。


 つまり、俺より上手い可能性もある……負けてられないな。


 俺がここにいるのはきっと、前世の記憶ありきのものだから。


 必死に努力しないと、すぐ置いて行かれてしまう。


「じゃあ、俺も質問です。先生に」


「おう、いいぞ。一斗」


「先生はなんでこのプロジェクトに参加したんですか?」


 そう言うと、先生の表情が少し固まる。


 けれどそれも一瞬で、すぐに元の笑みを浮かべた。


 なんだ、今の……?


「……バスケを辞めなくちゃいけなくなって、もうダメだってなってたら、代表……トップコーチに誘われたんだ。だから俺は、今ここにいる」


「へぇ……」


 なるほどな。……怪我、だろうか。


 プロにまでなった人だ。その悔しさは想像を絶する。


「……じゃ、先生から質問だ。お前らの将来の夢はなんだ?」


 将来の夢、か……。


 俺は将来、何がしたいんだろう?


 バスケを続けられれば万々歳だけど、プロになるのは難しいだろうし――。


「僕の夢は、NBA選手!」


「日本代表」


 ……ああ、若いなぁ。


 馬鹿にしてるわけじゃない。むしろ、その逆だ。


 眩しすぎて、困る。


 38歳まで生きた記憶のある俺にとって、無条件に夢を語れる若さが眩しい。


 それまでの過程や、困難。それらをぐだぐだ考えて、「でも」「どうせ」……なんて。


「いい夢だな、2人とも。一斗はどうだ?」


「俺は……」


 俺の夢は、なんだろう?


 NBA選手? 日本代表? プロのバスケット選手?


 そんなこと、考えたこともなかった。


 俺の夢は、いったい、なんなんだ?


「……じゃ、一斗だけ、これも課題だな」


「え?」


「将来の夢を、来月までに考えること。ここじゃ、野望なき者は淘汰される」


 野望なき者……。


「とうたってなに?」


「そんなこともわからねえのかよ、ザコ」


「ザコって言うなよシノ! わからないことはすぐ聞くべきだろ?」


「はいはい、喧嘩するなよー? 淘汰って言うのはなー」


 野望なき者は、淘汰される。


 つまり、切望するような夢がなければ、ここじゃやっていけない。


 ……夢。


 俺にもそれが、見つけられるだろうか?

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