05

「――それでは、このバスにお乗りください」


 1年生3名、4年生17名、5年生25名、6年生27名。


 総勢、72名。


 ……結構減ったなあ。


 バスに乗り、窓から外を眺める。


 バスは2台。それぞれ36人ずつが乗り込み、とあるところに向かうという。


 どんどん山奥に向かっていくバスに少し不安を覚えるが、誰も喋っていないので俺も黙り込む。


 誰か話しかけてくれんかなー……というか、誰も誰かに話しかけないのやばすぎる。


 こういう年代の子達って騒がしいものなのに……。


 しばらく外を見ていると、だんだんとひらけていっている事に気づく。


 これは……そろそろ着くのか?


 できるだけ前を見ようと顔を窓にくっつけると、奥に黒い建物が見える。


 ビル群のような、いくつものシェルターのような。かすかに見えるその存在たちは、この山の中で異質な光を放っていた。


 バスが駐車場と思しき場所に停まると、降りるように指示された。


 わらわらとバスを降りて荷物を持つと、相川梨生があたりを見渡し、ひとつ咳払いをした。


「今からみなさんには、初等部棟の入り口で受付をしてもらいます。名前を言っていただければ大丈夫です。では6年生から、並び順は適当で構いません。こちらにお願いします」


 俺たちは最後か。


 適当に外でも見て暇つぶしてよ……。


 ……あ、カラスだ。それと……あれはタカか。


 タカ……そういえばもう、生まれ変わってから7年か……。


 7年で親元を離れるとは思わなかったなぁ……。


 俺としては、前世の記憶があるからいいけれど……母さんたちは寂しくないだろうか、俺がいなくて……。


 ……ま、一歌も生まれるし大丈夫か。


 物思いに耽っていると、6年生が全員終わったみたいだ。次は5年生が案内されている。


 ……長いなぁ……。


 俺じゃなかったら飽きて砂遊びでもしてるぞ、1年生なんて。


 ……なんか、この2人は全然遊んでないけど。


 ずーっと直立不動だけど。


 ……話しかけようかなぁ……。


 話しかけるのハードル高いよなぁ……。


 いやでも……。


 ……話しかける、か……。


「……あ、あのさぁ」


「なに?」


 派手髪の男の子が、笑顔で振り返る。背の高い男の子は依然として前を向いたままだ。


 というか俺、あのさぁ……って、ホントに1年生みたいになってるじゃん!


 やばいやばい、もっとここは、大人っぽく……。


「君たちは、なんて名前なの? 俺は、東堂一斗」


「名前? OK! 僕の名前はすめらぎ悠仁はるひと! 気軽にハルって呼んでね」


「ハルくん。よろしくね。えっと、そっちの君は……」


「……筿原しのはら凌太りょうた。好きに呼べ」


 ……お、おぉ、クセ強〜……。


 俺様ってやつか? 1年生で「好きに呼べ」って……こわっ。


「あははっ、こえ〜! トードーにシノハラか」


「あ、俺のことは一斗か……」


 そうだ、あのあだ名……。


「イットーって呼んでよ」


「イットー?」


「俺の名前、一斗って、一斗缶の字とおんなじなんだよ。だからイットー」


「なるほどね! イットー! いいじゃん。じゃ、イットーだけあだ名はなんかアレだし……シノハラはシノだな! よろしくイットーにシノ!」


「はぁ!? シノってなんだよ! 気色悪ぃ……」


「ははは! じゃあ俺もシノって呼ぼうかな」


「お前までかよ。……ッチ、俺は絶対にお前らのこと名前で呼ばねえからな」


 おっと、怒っちゃった。


「じゃあなんて呼ぶの?」


「あ?……赤目に、金髪」


「赤目?」


 赤目って……赤い目ってことか? それが俺? なんで……。


「あ! イットーの目、確かに光に透けて赤に見えるな! coolでいいじゃん!」


「光?……うそだぁ」


「あ? テメー俺が嘘言ってるって言いてえのか」


「ち、ちがうよ! でも……」


 前は、そんなことなかったのに。


「僕知ってるよ。オレンジレッドってやつだ。キレーだなー……」


 まじまじと見られて、目を背ける。そんなに見られると気まずい。相手の顔がいいだけに恥ずかしいし。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る