放浪猫記(長編)

白咲 飛鳥

『脱走劇』

第1話 悠々自適な暮らし(?)

 「猫はいいなー」って思ったこと、ありませんか? いえいえ、実はそうでもないんです。これは、ポジティブな小学生の女の子が猫に転生し、悠々自適に過ごしたいがうまくいかない日常を描く、そんな話。


 あ、自己紹介が遅れました。ニャレーターを担当させてもらっています、にゃんたです。さて、主人公は…もう転生してますね。それでは、本編をどうぞ。


♦♦♦♦♦


 「コッケコッコー!」と、鶏が鳴く時間、つまり朝。主人公の原穂香は海よりも深い眠りについている。大丈夫、死んだわけではない。


「ふふふふふ、ふふふふわぁぁ、ふわわぁぁ」


 この「天才と阿保は紙一重」というに相応しい見事な五・七・五のあくびをして起きたのがこの話の主人公である。少し心配だ。いや、少しどころではない。


 ※これは実際に人語を話しているのではなく、猫の鳴き声の様なものですが、人語に変換してお送り致しました。会話シーンは実際に人語の日本語を話しています。


 ん、んんん?私は原穂香、13歳の女子だ。身長は少し高めで、目線はこんなに低くなかったはずなんだけど…。


 起き上がって、鏡の前(ガラスの窓)に座った穂香は、初めて気づいた。いや、気づいてしまった。自分が四足歩行で歩いていて、しかも猫であるという事を。


 いやぁぁぁ!!! ってほどでもないかな。うん。お母さんとお父さんは毎日会社で忙しいから一人には慣れてるし、別に猫になったからと言って不自由があるわけでも無さそうだし。


 穂香がそんなことを考えていたら、その体の母親であろう母猫がやってきた。


「ルナ、毛がボサボサじゃにゃい!私が直してあげるから、こっちにおいで」


 はーい。多分ルナってこの体の猫の事だよね?今行きまーす。


「うわっ、すっごい寝ぐせね。やってもやっても直らないにゃ」


 母猫がペロペロ、と毛づくろいを始めるも、シュバッと元に戻ってしまうルナ=穂香のアホ毛的存在が今、爆誕したのであった。


 最強の絶対に直らないアホ毛だという事に母猫は気づいておらず、ルナ=穂香の体をしっかりと押さえてやるも、撃沈。 


 体をしっかり押さえられて毛づくろいされたルナ=穂香は思った。「めっちゃ爪痛てぇ…」と。ルナ=穂香はそれだけで決めた、脱走しようと。


 

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