第10話 「前線を引っ張る力」

 


結界が破られ、

仲間が血を流し、

目の前で誰かが倒れるかもしれない――


そんな状況で、

昂大は立った。


 


始解によって変化した斬魄刀は、

刀身に浮かぶ文様と、淡い青銀の光を帯びる――

“結びの印”を刻む刃。


その周囲の空気が、

明らかに変わった。


 


敵は虚――それも異形の変異体。

圧倒的な攻撃力で、勇人ですら足止めされている相手。


けれど。


昂大は一歩踏み出しただけで、

空間に**“刻印”を打ち込んだ。**


 


「徽刻・陰印(いんこく・いんいん)」――


足元に展開された印が、

虚の身体にまとわりつき、霊圧の流れを鈍らせる。



刃が振るわれた瞬間、

虚の腕の動きが明らかに“遅くなる”。


 


その隙を――

昂大は、真正面から斬り込んだ。


 


「――はぁっ!!」


 


斬撃が直撃。

ただの攻撃ではない。

“印”によって緩められた敵の構造を、寸分違わず狙い撃つ“崩し”の一撃。



刃が、骨の奥まで喰い込んだ。



虚が絶叫する。

霊圧が暴れるが、それすら――



「徽刻・重結(じゅうけつ)」



重ねられた印が、

その暴走を“封じて”地へと引きずり落とす。


 


虚、1体――沈黙。


 



【同時刻・勇人サイド】


 


勇人「は、……マジかよ……」



二体の虚を相手に応戦していた勇人が、

片手で一撃を受け止めながら、視界の隅に“その光景”を捉えていた。



始解。

それも、ただの力押しではない。


仲間の霊圧を読み、

敵の流れを止め、

“仲間のために動ける始解”――


 


昂大が、前線で戦っていた。


 


「――あいつ……本気で、変わったな……!」


 


食い込んでくる虚の爪を弾き飛ばし、

勇人は大きく踏み込んで反撃に転じる。



勇人「だったら、俺もやってやんねーとな!!」


 


剣が火花を散らし、

斬魄刀紅閃が閃光を走らせる。


勇人「――――閃断!!」


勇人が虚の喉元を斬り上げ、

一体を倒す。


 


残るは、あと一体。

――昂大の正面にいる、最も大きく、重厚な虚。


 


勇人「昂大――行け!!」



勇人の叫びに、昂大は応えた。

その目に、もう迷いはなかった。


 


昂大「……ああ。任せてください、勇人さん」


 


春陽の背を、守るために。

自分の意思で、立つために。


 


――始解結徽、本領発揮。

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