ブラシスコントラクト
金木桂
#プロローグ 修羅場と妹二人
今日は体育祭当日で修羅場だった。
天気は気持ちのいい快晴にも関わらず、俺の目の前にはお互いを睨み続ける女の子が二人いた。
一人は俺の愚妹である
もう一人は俺の妹(新規)である
待て待て何を言ってるんだお前は、そんな声が聞こえてくるのも至極当然のことだろう。
だがこれは事実だ。玲が血縁関係的な妹であるのに対して、冬佳は言うなれば俺にとって精神的な妹であった。
そんな二人がこうして遭逢してしまえば口喧嘩が勃発するのは必然だったのだろう。
「良い機会だから宣言してあげる。お兄ちゃんは私のものになったから」
「はあ!? なにいってんのか意味分からないんだけど!」
「そのままの意味だけど?」
飽くまで余裕綽々と高身長から繰り出される上段からの高らかな宣言に、現実の妹たる玲は理解出来ないと言いたげな表情をしながら青筋を立てて冬佳を大いに睨んでいた。
なんとなく俺と冬佳の
しかしいつかバレてもおかしくなかったと言えど、まさかこんなにも早いとは。
それに玲の憤慨具合も尋常じゃない。いつもの俺を見下す冷徹な風貌は影を潜めて、言葉や表情から余裕がない様子が節々に現れている。
さてどうしようか。俺は空を仰いだ。生まれは違えど妹同士の喧嘩を治める術を俺は知らない。
そうして仲裁手段を思案しながら傍観している間にも言い合いは続く。
「てかそのお兄ちゃんってなに!? 潤戸さん大学生なのに年下のこいつをお兄ちゃん呼びって羞恥心とかないわけ!?」
「ふーん。玲ちゃんはお兄ちゃんをこいつ呼びかあ、随分と嫌ってるんだね。じゃあ私が貰っちゃっても良くない?」
「話を逸さないで!」
「別に反らしてないよ? 私は別に恥ずかしくないし、こんな場所で喚いている玲ちゃんの方が恥ずかしいと私は思うな。で、要らないなら頂戴?」
「……っ!?」
言葉が途切れる。その表情は怒りから真っ赤だった。
玲は冬佳の言葉に返答しないままグラウンドへと大股で歩いて行ってしまう。
……ったくなんでこんなことに。
冬佳は良くとも俺、家帰ったら凄い気まずいんだけど。本当の兄妹だから一緒に住んでるんだぞ。めっちゃ扱いずらいんだけど。
呆れた視線を送っていると冬佳はにかっと笑った。
「お兄ちゃん。そろそろ行こう? もう夕暮れだしさ」
「お、おう」
「そこは迷子にならないように手でも繋ぐか、だよね?」
絶対にそんな場面じゃないが、これは
美少女の手を握っているというのに思考は全く別の場所を高速飛行していた。
なんでこうなってしまったのだろう。俺にも勿論問題はある。
でも違うだろ?
そもそも俺は玲から嫌われていたはずだ。
少なくとも、自分の身内が取られそうになった子供みたいな激情を吐き出されるような関係性じゃなかった。
何度考えても分からない。
だがきっと事の転機はそう。
二か月前のあの日、俺が冬佳と兄妹契約を結んだ日だ。
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