プリクラ撮れて嬉しいね
放課後、それはクラスメイトが散り散りになって各々が好きなことをする解放の時間。
解放の時間のはずなのに俺は解放されずにいる。葛城、林田、遠藤、穂乃果、俺を含めた五人で放課後遊ぶことが決まっている。
もちろん、行きたいと自主的に言ったわけでもなく半強制的、いや強制的に行くことを取り付けられた。
昇降口へ向かうと四人は夕陽を背に待っていた。
「遅いよ! 全く、何してるんだね!」
穂乃果が語調を跳ねさせながら怒る。
「……行きたくもないのに無理やり取り付けられたのだから仕方ないだろ」
「それでどこに行きます? 穂乃果様」
「それはもう決めててね。ずばり、ゲームセンター!」
「おお! ゲームセンターだってよ、遠藤! あれやろうぜ、ホッケー!」
「よっしゃ、やるか! 行くぞ! ゲームセンター!」
このノリと熱さについていけてない俺だけがマイノリティで、どこか宙に浮いてしまっている。
おかしいのは俺なのかと錯覚しそうになるけど、どう考えても無理矢理拘束してゲームセンターへ連れていくこと方がおかしい。どうにか自分の意思を強く持って、俺は俺で居ていいんだと聞かせながらゲームセンターへ足を進めた。
学校から徒歩二十分の所にゲームセンターはある。俺たちが通っている学生や、他校の生徒もよく来ていて繁盛していて活気にいつも満ち溢れてる。俺もたまに行くが、そう頻繁に行くことは無い。
久しぶりに来たゲームセンターは相変わらず様々な音が重なって耳をつんざいた。
「おい、行こうぜ、遠藤!」
「今度は負けねえ!」
林田と遠藤は早々と勝手な自由行動を始める。なんと協調性がない事やら。
「あ、あれは! 私が好きなマルマルモリモ!」
と思っていたら、葛城もアニメのキャラクターのぬいぐるみに釣られてどこかへ行ってしまった。
残された穂乃果と俺は呆然と立ち尽くしていた。
「……そうだ! プリクラ撮ろ! プリクラ!」
「え、なんでよ。普通に嫌だよ」
俺はプリクラという機械が苦手だった。理由はとても簡単。キラキラとしていて、男の俺が行くには余りにも眩しすぎたし、それになんか恥ずかしい。
「今の姿を撮っておかないと損だよ、いつ元に戻るか分からないんだからさ」
「そんなのスマホでいいだろ。わざわざ四百円払ってまでもすることじゃない気が」
「うるさいなあ! ほら、つべこべ言うな、行くぞ!」
グイグイと背中を押されて、為す術なくプリクラの中に押し込まれる。前なら簡単に抵抗できたのに、体が変わってからというものの穂乃果の力に勝てた試しがない。これが衰えか。
そして、押し込まれたプリクラの機械が喋り始める。
「ハートのポーズを友達と作ろう!」
クソみてえな指令だな。終わった、誰がするかよ。
「ほら、するよ!」
「え、あ、ちょ!」
そうして、何枚かの写真が出来上がった。大体は俺が抵抗してブレている写真だったが、ハートの写真だけは無駄に綺麗に撮れていた。
穂乃果は出来上がった写真を手に取って、一枚を俺に手渡してくる。
「はい、これたけしの分ね。スマホの裏にでも挟んだら?」
「嫌だよ、恥ずかしい」
「ちぇ、つまんないの。まあ、いいや、みんなのところ行こ!」
走り出した穂乃果の背中に見えた喜びの気持ち。俺はその正体にまだ気付いていなかった。
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