悩んで退職した子のための、(悲しく)尊いお米店

冒険者たちのぽかぽか酒場

第1話 「退職」に悩んだら、異世界版「今訪れたい店」1位を獲得したあの尊いお米店にいってみませんか?

   (いみエモ話)

 意味がわかると、エモイ話。

 あなたは、この話の意味がわかりますか?

   ☆

異世界版・「今訪れたい店」で 1位を獲得した店が SNSで発表された。

 「もう会社を辞めてしまった人に、特にオススメのお米勉強店」

 「畑にも会社にも人にも認めてもらえなかった米から考える、お米の勉強店」

 何、それ?

 ともかく、「米不足」で騒ぐような今は、大注目店だろう。

 「店のご主人も、会社デビューに失敗した経験を持つらしいよ」

 「へえ」

 「再チャレンジご主人」

 「へえ」

 「だから、客目線でお勉強させてもらえるっていうこと?」

 「客目線で」

 「米目線で」

 「やっぱり、米か~」

 「米です」

 「いいね」

 「いいじゃないか」

 社会の話題も、考え方も、常にアップデートされていく。

 「会社辞める人、多いね」

 だれかがそう書き込むと、すぐにコメントが入る。

 「会社なんて、自分自身に会わず気にいらないと思えたら辞めれば良い。ちがう畑で、新しい力を発揮すれば良いじゃないか」

 「だよね」

 「わかる」

 「ねばりすぎても、疲れるだけ」

 「そっか…」

 「米も同じで、ねばりすぎれば良いものでもない」

 「米?」

 「ああ。あの店の店長に、言われたんだ」

 「…あの店?」

 「今、話題の店さ」

 本当に悩む子には、「客目線」「米目線」で話を聞かせてくれる店らしい。

 が、悲しい。

 「ではまた…」

 店のご主人は、相談の最後に、ふらっとどこかに消えてしまうことがあったようだから。

 その悲しさが、尊いね。


   (この話の意味)

 米職人でもある店の主人は、退職関係で相談してきた子に言う。

 「せっかく入れた会社も、つらくなったら辞めてしまえば良い。米も、同じでね。つらい中でねばっても、良い味が出るとは限らない」

 う…。

 「早期の人材確保って、どうなんでしょうね?早く種をまいて早く刈りとった米って、美味いですか?」

 たしかに…。

 「口に合わない米は、口に合う他の人にあげれば良いんです。米にも、再チャレンジが必要ですよね?」

 おお!

 こりゃ、面白そう。

 だから、「今訪れたい店」 1位にも選ばれたわけで。

 そんな店のご主人が、 最後に出かけていったのがこの場所。   

 「畑」

 ご主人にとっては、畑こそが、再チェレンジの場所だったのだ。

 ふふふ。

 エモいなあ。

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