余命宣告を受けた僕と一緒に消えると言い出した君の物語
@kakaosss
第1話
「今日も雨か」
連日の大雨に気分が沈む。あと何回空を見られるか分からないのに、と大きくため息を吐いた。
「おはよー」
呑気な君の声。空は黒く分厚い雲で覆われているというのに、晴れやかな声に思わず圧倒される僕。
生まれた頃からの幼なじみな君はいつもオシャレな髪型をしている。互いに名前では呼ばず「君」と呼びあっているせいもあってか自分の名前すらも忘れてしまった。両親に先立たれ、今まで育ててくれた祖父母も老いには抗えず今は老人ホームに世話になっている僕にとって「君」は心の支えとなる存在だ。
思い返せば君は不思議な奴だった。僕が辛い時にふらっと現れ、たわいもない話をしてふらっと消える。そこに存在するかどうかも分からない君に恋心を抱いたこともあるにはあるが、名前も知らない人に恋をするなんて、と心の中の自分が訴えかける。そうか、そうだよな。なんて無理やり納得させて今日まで生きてきた。
「何見てんの?悩んでそうだけど」
なんて声を掛けられてはっと顔を上げる。
「しまった!って顔してる」
と笑う君は僕の恋心に気づいているのだろうか
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます