余命宣告を受けた僕と一緒に消えると言い出した君の物語

@kakaosss

第1話

「今日も雨か」



連日の大雨に気分が沈む。あと何回空を見られるか分からないのに、と大きくため息を吐いた。



「おはよー」



呑気な君の声。空は黒く分厚い雲で覆われているというのに、晴れやかな声に思わず圧倒される僕。


生まれた頃からの幼なじみな君はいつもオシャレな髪型をしている。互いに名前では呼ばず「君」と呼びあっているせいもあってか自分の名前すらも忘れてしまった。両親に先立たれ、今まで育ててくれた祖父母も老いには抗えず今は老人ホームに世話になっている僕にとって「君」は心の支えとなる存在だ。


思い返せば君は不思議な奴だった。僕が辛い時にふらっと現れ、たわいもない話をしてふらっと消える。そこに存在するかどうかも分からない君に恋心を抱いたこともあるにはあるが、名前も知らない人に恋をするなんて、と心の中の自分が訴えかける。そうか、そうだよな。なんて無理やり納得させて今日まで生きてきた。


「何見てんの?悩んでそうだけど」


なんて声を掛けられてはっと顔を上げる。


「しまった!って顔してる」

と笑う君は僕の恋心に気づいているのだろうか

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