ハビトゥスの檻から解き放たれて
佐倉美羽
ハビトゥスの檻から解き放たれて
「ハビトゥス」――耳慣れない言葉かもしれません。でも、もしあなたが「なんとなく居心地が悪い」と感じた経験があるのなら、この概念は少しだけ、あなたに寄り添うかもしれません。
趣味や価値観、日々の選択。その多くは、育った環境や所属する社会的な位置によって、知らず知らずのうちに形作られていきます。これが「ハビトゥス」です。たとえば、私のライフワークである執筆さえも、選んだつもりで、実は選ばされていたのかもしれない――そんなことを思うことがあります。
この「ハビトゥス」は、所属するコミュニティ――つまり「場」のなかで強く作用します。そしてそのなかでは、自分の価値を証明しようとするような、見えない競争=“象徴闘争”が始まります。
SNSの世界にも、そんな風景があります。「それは間違っている」「もっと効率的にやれ」といった言葉が、SNSのタイムラインを埋め尽くします。思わずスマホを閉じたくなる、あの感じです。
そしてこの「見えない争い」は、職場にも確かに存在していると私は感じています。「そんなこともできないの?」といった上からの言葉。あれもまた、ハビトゥスの衝突の一つなのかもしれません。
最近では、新入社員がほんの数日で会社を辞めるという話も耳にします。それに対して、「根性がない」と責める声もあるでしょう。でも私は、その直感――「なんか違うな」と思う感覚こそ、正直な自分の声だと思うのです。
私自身、心を病んでまで職場にとどまり続けてしまったことがあります。だからこそ、伝えたいのです。
あなたがもし、立ち止まりたいと思ったのなら、それは立派な選択です。社会がどう言おうと、私はあなたの感覚を信じたい。同じような苦しみを知っているからこそ。
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