家族に会いたい

テマキズシ

会いたい


異世界に呼ばれてから二十年。ようやく私は魔王を討伐することができた。


家族と海外旅行に行ったある日、突然地面に現れた魔法陣により異世界に呼ばれた俺は、勇者となって異世界を救ってほしいと頼まれた。


何だそれは!家族の下に返せ!!大暴れしたが異世界から戻るためには魔王を倒す必要があると言われた。それ以外で帰る方法は無いと。最低の誘拐犯だ。国王を殺そうとした俺は悪くないと今でも思っている。


生まれて初めて剣を取り、辛い訓練を乗り越えた。全ては家族に会うため。そのためにどんな苦痛でも乗り越えてきた。


妻1人で娘ともうすぐ産まれる息子を世話をさせるわけにはいかない。そしてとうとう魔王の討伐に成功した。


しかしそこでとんでもない事を言われた。元の世界に戻す方法はないと。お前に魔王を殺させる為の方便だったと。国王は俺を殺そうとしたので返り討ちにしてその場から逃げた。


奴らは追っ手を放ち俺を殺そうとしてくる。かつての戦友もこの手で殺した。何で俺は逃げているのか分からなかった。家族の元に帰れないなら生きている理由が無いというのに。


怪我と汚れでボロボロになりながら国を移動する。辿り着いた先はワノクニと呼ばれる、かつての勇者が作った国だ。


江戸時代の町並みが再現されており、かつての戦友に懐かしいですか?と聞かれた記憶がある。その時は時代が違い過ぎると笑って返したものだ。


ワノクニの森の中を歩いていると河原が見えてきた。そして花の香りがフワリと香ってくる。


「…ああ。」


懐かしい香りがした。俺はその香りに釣られ河原へと進んでいく。そこには大量の桜が綺麗に咲いていた。


「…ううう。」


その時、もうボロボロになっていた家族の記憶が浮かび上がる。娘が産まれた時、病院の近くには綺麗な桜が生えていた。小学校の入学式でも桜が見えた。異世界でも桜は何も変わっていなかった。


もう会えないんだ…。美しく桜並木を見ていると元の世界を思い出す。俺はフラフラと桜に近づくと、桜を抱きしめ泣き出してしまう。


「会いたい…あいたいよお…。」


何でまだ生きたいと足掻いているのかようやく思い出した。俺はまだ諦められないんだ。


20年という長い年月を経てもまだ家族に未練があるのだ。もう俺のことなんて忘れているのかもしれない。別の男と結婚しているかも知れない。でも諦めきれない。


「必ず。元の世界に戻ってみせる。」


丸一日泣き晴らした。もうこれ以上涙は流さない。次に泣く時は家族に会った時だ。


フラフラの体を叩き起こし、王国へと向かう。少しでも情報が欲しい。まずは王国の召喚式から情報を手に入れてみせる。


故郷へ帰るため。家族に会うため。俺は再び立ち上がった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

家族に会いたい テマキズシ @temakizushi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ