□□□記録保管室より
ロロ
第1話「送信できない写真」
――以下は、調査担当が提出した初期報告書の抜粋である。
(文面に一部、判読不能箇所あり)
---
大学の写真サークルに所属する大学生・T氏が提出した証言資料によれば、
問題の発端は、山中の神社跡を訪れた際に撮影した一枚の写真にある。
その場所は現在、正式な地名としても登録されていないが、
某県北部の山岳部、旧登山道より外れた位置に存在していたという。
すでに地図からは抹消されており、地元住民の間でも言及は避けられている。
T氏のスマートフォンに保存されていた写真には、
崩れた鳥居の奥に続く石段と、黒く濡れたような社の屋根が写っていた。
不自然なのは、中央に立つ“のっぺらぼう”のような人影である。
「そのとき、誰も前に立ってなかった。
けど、カメラ越しには“何か”が動いてた気がしたんです」
彼は帰宅後、写真をSNSに投稿しようと試みたが、
投稿のたびにスマホが強制的に再起動される。
さらに不可解なことに、その画像を開こうとすると、
画面に一瞬だけ“見知らぬ言語”のような文字列が走るという。
別の端末に転送を試みるも、USB接続中に写真だけが消去される。
クラウド保存を試みたが、該当ファイルのみ「転送失敗」となった。
問題の写真は最終的に、T氏の端末ごと破損し、回収不可能となった。
現在、同様の報告が複数寄せられており、
いずれも“山中の廃神社”を訪れた直後に写真送信の不具合が起きている。
不可解な共通点として、影の位置、社の角度、階段の本数までが
「一致している」にもかかわらず、撮影者が異なる山を訪れていたと主張している点がある。
調査報告書には、手書きでこう記されていた。
> “あの場所は、記録されることを拒んでいる”
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【補足】
この現象が確認されたスマートフォンはすべて、末尾に「-□□□」の製品コードが割り振られていた。
関連性は現在、調査中である。
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