第375話 なりたい自分

 パステルミケネコのキャリコは、イヌノフグリの集落しゅうらくからお引っ越ししてきたネコだ。


 ぼくに何度も救われているから、ぼくを「シロ先生」と呼んでしたってくれている。


 ハーブティーの作り方を教えてからは、毎日ハーブティー作りにいそしんでいる。


 火の起こし方も教えたから、寒い日にはホットハーブティーを作っている。


 水が冷たいと、ネコは水を飲まなくなっちゃうからね。


 ハーブティーを飲むようになってから、病気になるネコはかなり減ったようだ。


 感染症も流行はやっていないし、みんな元気そうでぼくもうれしい。


 ケガだけは、ハーブティーではどうにもならないけどね。


 🐾ฅ^・ω・^ฅ🐾


 かごを背負ったキャリコは、草むらでせっせと薬草みをしていた。


「キャリコさん、ぼくも手伝いますミャ」


「シロ先生、助かりますにゃう」


 ぼくとキャリコは、かごがいっぱいになるまで薬草を集めた。


 いっぱいになったかごを見て、キャリコがうれしそうに笑う。


「ありがとうございますにゃう。これでまた、たくさんハーブティーが作れますにゃう」


 キャリコはさっそく、薬草を種類ごとに仕分けしていく。


 仕分けした薬草を、数本ずつ束ねて草で結ぶ。


 毎日ハーブティーを作り続けているキャリコは、かなり手慣れたものだ。 


 最初の頃は、薬草の見分け方もおぼつかなかったのに。


 今じゃすっかり、ハーブティーの専門家だ。


 ぼくも作業を手伝いながら、キャリコに話を振る。

    

「キャリコさん、もしよろしければ一緒に旅へ行きませんミャ?」 

 

 キャリコは作業の手を止めて、申し訳なさそうな顔でぼくを見つめてくる。


「ごめんなさい、おことわりしますにゃう」


「どうしてミャ?」


「ボクもシロ先生みたいに、たくさんのネコたちを救うのが夢でしたにゃう」


「でしたら、ぼくと一緒に行きましょうミャ」


「今はみんなに『美味おいしい』って喜んでもらえる、ハーブティー作りが好きなんですにゃう。だから、行けませんにゃう」


「旅に出れば、イチモツの集落しゅうらくには生えていないハーブもたくさん見つけられますミャ!」


「ボクはイチモツの集落しゅうらくが大好きなので、離れたくありませんにゃう。本当に、すみませんにゃう」


「そうですミャ……」


 今までお医者さんをこころざしていたキャリコは、ハーブティーの専門家というなりたい自分を見つけたようだ。


 それは、とても良いことだと思う。


 だけど、ぼくの最後ののぞみはたれた。


「ボクはいつでも、シロ先生のご活躍を応援していますにゃう! 頑張ってくださいにゃうっ!」


「……ありがとミャ」


 キャリコは明るくはげましてくれたけど、ぼくはガッカリしてしまった。


 結局、グレイさんとふたりで行くしかなさそうだ。

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