現代版桃太郎
テマキズシ
新訳 桃太郎
むか〜し昔。まだSwitchが生まれる前。遥か昔のお話しじゃ。
とある山にお婆さんとお爺さんが住んでいました。
お婆さんは川にあるキャンプ場に若い子漁りに。お爺さんは都心にあるメイド喫茶でニャンニャンしに。
二人とも行き先を誤魔化し、笑顔で向かって行きました。
お婆さんは川沿いにいるソロキャンパーに狙いを定めました。お婆さんはこの道のプロ。優しい声色でお兄さんに話しかけます。
「これこれ。そんなに川の近くにいると流されてしまうよ。」
お兄さんにアドバイスをすると、お兄さんは可愛い笑顔でお礼を言ってきました。余りの可愛さにお婆さんが気付いた時には次の日になっていました。
「ここ最近体が疲れてしょうがないねえ。あら?あの子は何処にいるのかしら。」
お兄さんのテントで目を覚ましたお婆さんは辺りを見渡しますが何処にもお兄さんはいませんでした。
「まあ!なんてこと!」
変わりにそこにいたのは一人の男の子。それもまだ赤ん坊。お婆さんは直ぐに服を着て赤ん坊の下へと駆け寄ります。するとそこには1枚の手紙が置いてありました。
おいババア。お前の不貞の証拠写真を俺は持っている。バラされたくなかったらこのクソガキを処分しろ。
お婆さんは絶句してしまいました。なんてこと。赤ん坊を処分なんてできる訳が無い。人道に恥じた行為だと。
こうなったら私がこの子を育ててみせましょう!お婆さんは決心しお爺さんの下へと向かいました。
「なんだこの子は?!お前子供は産めないだろう。……もしや攫ったのではあるまいな。」
お爺さんはいきなり子供を連れてきたお婆さんに大層驚きました。警察を呼ぼうとピッカピカの最新スマホをポケットから取り出します。
お爺さんは自分もメイド喫茶で女の子のエデンを覗き見していたというのに、そんな自分を棚に上げて犯罪はやってはいけない!とお婆さんを説得しています。
「話しを聞いてお爺さん。」
お婆さんはお爺さんの説得をスルーし、咄嗟に言い訳を始めます。友達と遊んだ帰り道。川からドンブラコドンブラコと桃が現れ、中から産声が聞こえたので咄嗟に割ってみたら中にこの子がいたのだと。
お爺さんは最初こそ嘘だと喚きましたが、ここ最近できた電波塔とこの山の神様の影響と言ったら納得しました。
お爺さんはスピリチュアルな陰謀論者だったのです。
二人は子供の名前を桃から生まれた桃太郎と名付けました。役所の人から止められましたが二人はそんなこと気にもとめませんでした。
それから十数年。何の問題もなく男の子は成長していきました。多くの問題が家族に降りかかりましたが全てお婆さんとお爺さんの金の力で解決していきました。
二人は大量の山や建物を持つ大地主だったのです。その二人に甘やかされて育った桃太郎は金を使えば全てを解決できる事を悟りました。
こうして三人は幸せな日常を送りました。めでたしめでたし。
とはなりませんでした。何と三人の日常を壊そうと襲いかかる鬼の姿があったのです。
その鬼は桃太郎に対し自分こそ本当の父親だと話しました。そして二人をこっそりと始末して金を手に入れようと提案してきたのです!
桃太郎は怖くなって二人に相談しました。自分が本当に二人の息子だとは思っていませんでしたがまさか金目当てで人を殺そうとする人間の息子だったとは…。桃太郎は辛くて泣いてしまいました。
そんな桃太郎を二人は何とかしたいと思い、抱き合い慰めます。
「そんな人は貴方の父親ではないわ。きっとその男は電波に頭をやられてしまったのね。かわいそうに。」
「ああそうだ。お前は桃から生まれた神の子。人の子風情に心を囚われる必要はない。」
二人に慰められた桃太郎は笑顔を取り戻し、二人のためにも鬼退治をしてみせる!!と意気込みました。そんな桃太郎を見た二人は嬉しそうにあるものを取り出しました。
それは大量のきび団子。そしてお金でした。桃太郎は貰ったきび団子とお金を手にすると意気揚々と鬼退治へと向かいました。
まずは貰ったお金を使い、警察を自分専用の犬に変えました。犬は涎を垂らしながら自分の後ろについています。
次は猿です。近くの半グレにきび団子を食べさせ、考えることのできない猿に変えました。
このきび団子はとても美味しく、これを食べると他のことを考えることができなくなるのです。犬はそれを見るとゲラゲラ笑っていました。
そして最後に近くのマスコミにいいネタが入ったと言い、マスコミを桃太郎に都合のいいニュースを書く雉になりました。
雉は犬と仲がいいようで何か事件があるたびに二人が話し合っているのを桃太郎は知っています。桃太郎は従者の仲の良さにニコニコになりました。
そうして家来を増やした桃太郎はとうとう待ちに待った鬼退治を始めました。
鬼ヶ島と言う名前の酒場に鬼が居ることを知った桃太郎は大量の猿を送り込み、店を廃業させました。
猿たちは言葉にならない声を上げながら店をドッタンバッタンと壊していきます。大量の悲鳴を聞いた桃太郎は、これが女の子の悲鳴だったらよかったのにと顔を顰めました。
そうしてボロボロになった鬼ヶ島に、今度は犬を送り込みました。犬は捜査のための言い桃太郎の脅迫材料に使われていた写真やDNAの鑑定書を盗みました。
そして犬は手に入れた証拠を捏造し、作り上げた事件で鬼を捕まえました。鬼はたいそう驚きましたが自分は無実だと一丁前にわめき散らかしたのです。
これには流石の桃太郎も驚きました。さっさと罪を認めれば今より酷い事にはならないというのに。きっと頭が悪いのだ。かわいそうに。
桃太郎はそうボヤくと、近くにいた雉に鬼を非難する内容をニュースに出すように命じます。
雉達の拡散力は高く、日本中の人間が鬼の敵になりました。鬼は余りのことに涙を流し、桃太郎に懇願します。
「俺が悪かった…。許してくれえ!!!」
猿、雉、犬は無様な鬼の姿に笑いますが、桃太郎はそんな素振りを見せません。流石は桃太郎。鬼の目を真っ直ぐ見るとぎゅっと手を握りました。
「もう二度と悪いことをしないならば今回の件は許してやろう。」
「本当か?!もう二度と悪い方はしません!許してください!!」
何と慈悲深いことでしょう。桃太郎が去っていく姿を猿、雉、犬は拍手で見送りました。
その数日後。鬼は海に飛び込みました。詳しいことは何も分かっていませんが、恐らく桃太郎の優しさを知ったことで自分の醜悪さを理解してしまったのでしょう。
その後桃太郎は鬼を捕まえた名声を利用し、国の偉い人になりました。
そうして鬼の脅威を追い払い平和な人生を手に入れた桃太郎達は、三人で楽しく人生を過ごすのでした。
めでたしめでたし
現代版桃太郎 テマキズシ @temakizushi
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