0−4 プロローグ 4
「ここまで話をしてきて今更なんですけど、私って本当に神様なんですか?御三方が嘘を言ってるとは思いませんが、私自身、強い力……神霊力でしたっけ?そんな力を持ってるような自覚はありませんけど?」
「確かに、其方がいた世界では魔力持ちもほとんどいなかっただろうし、疑うのも無理からぬ話だ」
……おっと出ました、異世界ファンタジーの定番中の定番、魔力!でも、神霊力と魔力って違うものなのかな?
「えっとね。魔力って言うのは、魂となった精霊が持っている力の事で、本来なら誰もが持っているんだけど、物質界の生命が持っている肉体には魔力を阻害する性質があるの。さっき言った通り、魔力や神霊力は肉体にとっては有害だからね、だから物質界の生命の肉体には出来るだけ魔力を無害化する機能が搭載されているってわけ。だから殆どの人は自分の中に魔力があるのを気が付かないの」
「そうなんですか?では、魔力持ちというのはどういった方々なのでしょうか?」
「魔力持ちは読んで字の如く、肉体に阻害されつつも魔力が魔術を使える位まで持っている人の事だね。アリアがいた地球だと、百人もいないんじゃないかな?数えた事はないけど、それ位貴重な存在だね。まあ、神霊力とは違って魔力持ちが持っている魔力程度ならそこまでの健康被害はないんだけどね」
地球の総人口は八十億人を超えているから、その中の百人だと考えたらレッドデータブックに掲載されてもおかしくは無い人数だろう。
「なるほど。では魔力と神霊力は違う力なのでしょうか?」
「簡単に説明すると、出力の違いね。魔力が出せるパワーが拳銃位だとすると、神霊力の出せるパワーは核爆発位の差ね。あと使える権能にも差があるわ。魔力だと、どれだけ頑張ってもお母様の持つ権能である『創造』は使うことは出来ない」
……今さらっと、お姉様がとんでもない発言をしていたと思うのだが、私以外誰も驚いていないね。世界を破壊できるような力を、ここの人達……私の家族は持っているのね……。
「あっ、あの……、神霊力を持つ……例えばお姉様は、その『創造』を使う事はできるのですか?」
「『創造』は特別な権能だから、神霊力を持ってるだけじゃ使えないわ。お花を創ったり、建物を建てたりとかくらいなら私にもできるけど、お母様みたい大規模な事は私には無理ね。あと魔力は、魔力持ちが生まれた物質界でしか使えない。精霊は神霊力の下位の力『霊力』を持っていて、霊力は精霊界と物質界の両方で使えることが出来るけど、精霊界の外にある未開拓な宇宙では使う事は出来ない。神霊力は何処ででも使う事が出来る。まあ、ざっくり説明するとこんなところかな」
……お姉様、用語解説ありがとうございます。
「アリアは神霊力を持っている事を疑っているようだが、我等はアリアの神霊力をずっと感じている」
「そうなのですか?」
「ああ、我々だけでなく精霊も神霊力を感じる事が出来るが、アリアが我等の神霊力を感じていないのならば、多分まだそこまで成長しきってないのだろう」
「私も、お父様達の神霊力を感じるようになるまでに、随分かかったしね」
……十五歳の私じゃあ、まだまだってことだね。
「フーシ様……、それではアリアがずっと不安なままではないでしょうか。何とかなりませんか?」
「ふーむ、どうしたものか……」
「なら、タカアマハラの礎を使えばどうかな?アレなら神霊力を急速に補充すると光るはずだし」
「なるほど、それは良いかもしれん」
早速私達は、御付きの精霊達を伴って宮殿の礎に向かう事になった。
長い長い渡り廊下の先の扉を抜けると、屋根がドーム状になったものすごく広い吹き抜けの部屋に入った。そして、その部屋の中央には五階建ての屋根に届きそうな巨大なクリスタルが鎮座していた。……これが、礎?すっっごく、大きいね!
「この礎は、普段は自然に我等家族の神霊力を吸収しているのだが、礎に直接触れることでも神霊力を補充させる事が出来る。補充した神霊力が強い程、礎は強く輝く」
そう言ってお父様は礎に触れた。……おおう、光ってる光ってる。
「礎とは、このタカアマハラを守る結界の源であり、タカアマハラを維持する要でもある。タカアマハラは精霊界の中心であるため、ここが崩れると精霊界全体に被害が広がる。とても重要なものだ」
……そんな重要な場所なのに、こんなにオープンでいいのかな?まあ、それだけここの護りに自信があるのかも。
「さあ、早速アリアも触れてみなさい」
私は礎に近づき、初めは指先でちょんちょんと突いてみたが、大丈夫だとわかると……それでも恐る恐る掌全体で礎に触れてみた。
……おおっ、光ってる。私に神霊力がある証拠だ。これは感動するねっ!
「ほう、私より光が弱いが、ナクロールと同じ位はあるか……」
お母様と同じ位ということは、結構強いんじゃないだろうか。
「凄い凄いっ!これは、私より神霊力は強いねっ!」
ポッと出の妹の方が神霊力が強いなんて、気分が悪いんじゃないかと思いお姉様の方を見てみたら、手を叩きながら大はしゃぎしていた。……嫌われなくて、よかったぁ!
「アリアはまだまだ成長するから、私と同じ位強い神霊力を持つやもしれんぞ」
……娘にそんなプレッシャーを与えないで下さい。それにお父様ってこの世で一番の神様なんですよね?
しかしこれって、いつまで触れたままでいたらいいのだろう?何だかとても疲れてきたんですけど?
「アリア!早く手を離しなさいっ!神霊力を吸われすぎますっ!」
「……あっ……あれれ……?」
……お母様、ちょっと遅かったみたいです。
みんなが駆け寄る気配を感じながら、私の視界が暗転していった……。
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