第4話
「違うって!実際可愛いし優しいし自分の芯がある凄い人なんだって!私の推測ではおそらく天使の生まれ変わりなんだと思うんだよな」
私が大真面目にそう言うと、ユリアはまた始まったよというような表情で私を見る。
たしかにしょっちゅう妹のことを喋っているけど、唯一の親友なんだからそんな顔で見なくていいのに。
そんなことを思っていると、注文した商品が来たので二人で食べ始める。私はガツガツ食べ、ユリアはよく分からない機械をいじりながら、ちまちま小さく食べている。
これもいつものことだが、ユリアはマルチタスク能力が非常に高いので、なにか作業していてもなんの問題もなく会話は成立する。
私は2つのことを同時にできないタイプなので、ユリアのそういうところを見るたびに凄いなぁと毎回思ってしまう。
私達二人は、ハンバーガーを食べながらダラダラと他愛のないことを駄弁った。学校の先生への文句や、ユリアの家族の話など話題は尽きない。
中でも一番会話に熱が入るのは私の魔法少女の話だ。
「ていうかやっぱり私だけ正体が隠せないのおかしくない!私だけアフターケアが全然ないじゃん!」
「フェアリーがいないんだから仕方がない」
「ったく…魔法少女になったっていいことないな」
「私は面白い」
「他人事だと思って楽しみやがって…」
ユリアは私が後天的に魔法少女になったことが面白くて仕方がないようだ。
怪人や魔法少女には未知な部分が多く、元々研究していて面白かったらしい。そんなユリアの身近に私という未知な存在がいるというのは、ラッキーなことなのだろう。
「私も高校生になったら魔法少女に変身できなくなるのかねぇ」
「特殊な事例だから不明。でも、高確率でなれなくなるはず」
普通の魔法少女は個人差はあれど、だいたい中学生くらいに魔法少女として活動し始め、高校生になる頃には魔法少女に変身できなくなる。
魔法少女とは少女の間しか変身できないという絶対的なルールがあるらしい。
ということは…約3年間は魔法少女として生きていかなければならないってことか…3年か。長いなぁ。
まあ後ろ向きに考えても仕方がないか。ユリアの楽しそうな顔が見れるだけでも幸運だと考えようかな。
私は常々、中学生くらいの女の子が怪人と戦うなんてどうなのと思っていた。
ちなみにこの考えはこの世界では主流ではない考えで、こんなこと堂々と言うと異端な思考の持ち主だと思われるだろう。
なぜなら、怪人には魔法少女しかダメージを与えられないし、大人が戦ったところで怪人にはなんの影響もなく、ただただやられるだけだからだ。
そんな考えを持つ私だから、私が戦うことで他の魔法少女が楽になるのならまあいいかと思い活動している。
でも、せめてバイト代くらいは出ませんかねえ…ああ、出ない?はいはい言われなくてもわかってますよ。
こんな金にもならない活動を人知れずやっているなんて普通の魔法少女は凄いわ。
あまり気負わず、適当に私なりにがんばりますかね。
★
魔法少女をやっていていいことなんて、空を飛べるようになって移動が楽になったことくらいだ。
もしかしたら魔法少女って、どうしてもトイレにすぐ行きたいとき、素早く駆けつけることができるというだけの存在でしかないのかもしれない。
「レーダーに反応あり。いつものようにお願い」
ユリアと放課後公園でダラダラ喋っていると、ユリアが持っている怪人レーダーに反応があった。
ちなみにこの怪人レーダー、なんとユリアが作り出したものだ。普通の中学生はこんなもの絶対に作れない。改めて思うが、ユリアはやはり天才だ。
まあ普通の魔法少女はフェアリーに怪人が出たことを教えてもらえるので、私くらいにしか必要がないものなのだが…
「オッケー。さっさと終わらせますかね」
いつものように私はドレス姿に変身し、ユリアを背負う。
ユリアには私と怪人が戦っているところを見て色々情報を収集したいという研究意欲がある。だから、いつも私はユリアを背負って一緒に現場に連れて行っている。
私が空を移動するスピードはかなり早い。普通の人は空を飛んでいる魔法少女の背中に乗って移動なんて怖いと思うのだが、ユリアは平然としている。
「ほんとに私達の語らいを邪魔しないで欲しいよ」
「自分はもっと怪人に出てきて欲しい」
「ユリアはデータを取りたいだけでしょ!」
私の体感では、怪人は1週間に1回位の頻度で出てくる。
怪人は何故か暗くなると出てこない。昼行性だとか、暗闇が見えないだとか、いろいろな説はあるが、実際の理由は不明。だから、そういうものなのだと思うことにしている。
私はそれについて少し不満がある。
なぜなら、妹様とショッピングに行ったり、ユリアとダラダラ遊んでいたりする時間に、よく怪人がでてくるのだ。
中学生の放課後は、遊ぶためのなにより大事な時間なのだ。それを台無しにしないで欲しい。
だから私は怪人が出たらさっさとそこに向かい、できるだけ秒殺するようにしている。時間がもったいないからね。
時間がもったいないからといって、他の魔法少女に任せっきりにして放置するのもなんか気持ち悪くて嫌なのだ。トイレをして流さないでいるのはなんか嫌じゃん?私にとって他の魔法少女に任せて放置というのはそれと同じことなのだ。
そういう気持ちになるのには、子供に戦いなんてさせるなという私の考えが元になっているのだろう。
だから、私の手の届く範囲くらいは戦ってあげたい。
そんなことを考えながら空を飛び向かっていると、レーダーに反応があった場所についた。
「ここは…ショッピングモールにでたのか」
「終わったらショッピング」
「いいね!色々見て回ろうか」
のんきにそんな会話をしながら中に入る。まるで緊張感がないが、まあいつも通りだ。
私達のショッピングのために、さっさと怪人なんて片付けてしまおう。そう意気込みながら目的地へ向かう。
ショッピングモール内は人が多いので、少し騒がしい。騒がしいのだが、人が多い割に悲鳴などは聞こえてこない。それどころか、何故かある種の落ち着きさえ感じられた。
「あれ?どうしたんだろう?いつもとなんか様子が違うね」
「おそらく誰か他の魔法少女が先に戦っている」
「なるほどね」
ユリアに言われて合点がいった。
どうやら、避難はある程度終わっているようだ。これだけ避難が迅速に終わったということは、そういうことだろう。
私達がつくより先に魔法少女が戦っているなんてことは今まではなかったことだ。
ユリアの怪人レーダーはやたらと性能が良く、フェアリーが怪人を認識するよりも早く反応する。さらに私の空を飛ぶスピードは、他の魔法少女よりも圧倒的に早いらしいので、いつもは他の魔法少女より私のほうが早く目的地につくからだ。
そんな私達より早いということは、元々魔法少女がショッピングモール内にいたのだろう。
「あれは、水の魔法少女と炎の魔法少女かな。最近よく合うね」
「自分達と同じ区域に住んでいると推察する」
あの魔法少女二人組は顔見知りだった。名前は知らないので、炎、水と魔法少女の特徴で呼んでいる。
あの二人は、いつも私が怪人を倒した後、遅れてやって来るのだ。よく見ると思っていたが、同じような場所に住んでるからよく合うのか。なるほど合点がいった。
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