第31話 アクアの無自覚爆弾発言

「カズマさんカズマさん~、お金ちょうだい。最近、神聖水の材料が高騰してて困ってるのよ~!」


「なあアクア、お前、自分で稼ごうって気は一切ないのか?」


朝のアジト、リビングルーム。

俺がパンをかじっている隣で、アクアがテーブルに突っ伏していた。魔王軍との戦いも一段落して、久しぶりに平和な朝だ。


「だってぇ、最近はめぐみんとばっかりイチャついて、私はすっかり蚊帳の外なのよ? 神の扱いがコレでいいのかしら?」


「だからって俺に集る理由にはならねーだろ。ていうか、“蚊帳の外”ってなんだよ、なんもしてねーだろお前」


「してるわよ! 見てないところで私はがんばってるんだから!……たぶん!」


「信用ゼロかよ……」


その時、廊下からバスタオルを肩にかけたダクネスが顔を出した。


「おいアクア、またカズマに集ってるのか。朝から元気だな」


「うるさいわね。私は神よ? もう少し大切に扱いなさいよ!」


「自分で言うやつがどこにいる……」


そんな中、階段から寝ぼけた様子で降りてくる黒髪の少女。


「……おはようございます、カズマ……」


「お、珍しく敬語っぽいのが寝起きテンションか?」


「まだ頭が爆裂してませんので……」


俺が苦笑いで席を詰めると、めぐみんが自然に隣へ腰を下ろす。

そして、その様子を見ていたアクアが、ニヤニヤ顔で言いやがった。


「はーいはい、今日もバカップル成立っと。ねえねえ、ぶっちゃけもうキスくらいはしたんでしょ?」


「ぶっ……!」


紅茶を吹き出すめぐみん。俺は反射的にアクアを睨んだ。


「お前な、朝っぱらからなに言ってんだ!」


「いやいや、だって昨日の夕方、二人で庭にいたじゃない? あれ、どう見ても“そういう雰囲気”だったわよね~?」


「そ、それは……ただの散歩ですよ!」


「ふーん、そうかしら? でも私、ちょっとキュンとしちゃったのよね。ああいうの見てると、神様でもキュンとくるのよ」


「……アクア、あんた、黙っててくれませんか……?」


めぐみんが顔を真っ赤にして震えてる。

さすがにこれ以上は爆裂が飛ぶぞ。


「アクア、いい加減にしろ。お前のそういう無自覚爆弾が一番怖いんだよ」


「え~? でも事実でしょ? だって二人、もう付き合ってるんでしょ?」


「……うるさいです!」


「はあ……心臓が爆裂するかと思った……」


「お前、自分で言うのもなんだけど、繊細すぎるぞ」


「当然ですよ。こういう話題を皆の前で出されたら……もう、どうすればいいかわからないです……」


「俺もさすがに焦ったけどな。でも、まあ……」


「まあ?」


「そういう話題が出るってことは、やっぱり俺たち……それっぽく見えてるのかもな」


「っ……」


再び、めぐみんの顔が真っ赤になる。


「……じゃあ、次は……二人きりのときに、ちゃんと……」


「ん? なんだって?」


「な、なんでもないですからっ!」

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