この素晴らしい世界に君との日常を!

このすば好きの匿名F

第1話 カズマとめぐみんの日常

朝。アクセルの町は、今日も変わらずのどかで、少しだけ賑やかだった。


ギルドの窓際席で、カズマはいつも通り頬杖をつきながら、ぼんやりと空を見ていた。めぐみんはその隣の席に、椅子を引いてちょこんと座る。


「カズマ、今日は依頼に行かないんですか?」


「んー、行こうと思えば行くけど、なんか最近、急がなくてもいいかなって思ってさ」


「ニートの思考なんですよ、それ」


「うるせえ。そもそも俺、ニートじゃなくて冒険者だからな? 今は省エネモードなんだよ」


「それ、ただのサボりじゃないですか…」

めぐみんは苦笑しつつも、どこか楽しげにカズマの隣で紅茶をすする。


ふと、カズマはめぐみんの横顔を見た。表情はいつも通り――ちょっと偉そうで、誇り高くて、それでいて、やっぱり年相応に子供っぽい。


「なあ、めぐみん」


「なんですか?」


「お前、最近爆裂魔法の詠唱、ちょっと変えた?」


「えっ…カズマ、気づいたんですか?」


めぐみんの目がぱっと輝いた。驚き半分、嬉しさ半分といったところだろうか。


「そりゃ毎日聞かされてれば、ちょっとぐらい気づくさ。語尾のとこ、ちょっと伸ばしてたろ」


「はい! 最近、もっとカッコよく響かせたいなと思いまして…」

めぐみんは胸を張る。なぜか誇らしげだ。


「ふーん、そういうの考えるのも好きなんだな。ちょっと意外だったわ」


「えっ、意外ですか? 私、見た目通り、繊細で詩的な心を持っているんですよ?」


「いや、見た目通り…かどうかはともかくとして、まあ、悪くないんじゃね?」


その一言に、めぐみんはふっと微笑んだ。


「カズマに褒められると、ちょっとだけ自信が出るんですよ」


「…なんだよ、その“ちょっとだけ”ってのは」


「本気で褒めてるようには聞こえなかったので、念のためです」


「こっちは割と本気だったんだけどな…」


カズマはそう言って、そっと視線を逸らした。


心の中に、ほんの少し、あたたかいものが灯った気がした――それが、なんなのかはまだ分からない。

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