第27話:予感

翌朝の教室。

いつもと変わらない風景――のはずだった。


だけど、藤本悟は、ふと感じた。


(なんか……視線、あるな)


周りをちらりと見ると、隣の席の友達がやたらとニヤついている。

廊下では、女子グループがこそこそとこちらを見て笑っている。


(まさか……)


そんな不安を抱えたまま、午前中の授業が終わった。


昼休み。

茜と話そうとした瞬間――


「悟くん、ちょっといい?」


話しかけてきたのは、クラスの女子・三条さやか。

明るくて、ちょっとお節介なタイプだ。


「最近さ、七瀬さんと仲いいよね?」


「え、まあ……幼馴染だから」


「ふーん? そういう幼馴染ってさ、“付き合ってる説”とか流れるよねー」


(……完全に疑われてる)


「べ、別に! そんなこと……」


「そっかー? でも、昨日の駅前で手、繋いでたの見たけど?」


悟の心臓が跳ねた。


(やっぱり、見られてた!?)


その日の放課後。

ふたりは少し離れた公園のベンチで落ち合った。


「さやかさんに、言われたんだ。昨日のこと」


「……うそ、見られてたの?」


「どうしよう……もう隠しきれないかもしれない」


茜はしばらく黙って、静かに息を吐いた。


「じゃあ……隠すの、やめてみる?」


「え?」


「もう、嘘つくのも苦しいし。――好きな人と一緒にいるの、堂々としていいと思う」


茜の目は、揺れていなかった。


悟は少し驚いて、それから笑った。


「……そうだな。俺も、隠してるの嫌だった」


ふたりは見つめ合い、そっと手を重ねた。


その手の温もりが、覚悟の証のようだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

高校生専用マッチングアプリで幼馴染とマッチングした @tubotuboex

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ