第17話:初めての、特別な日
「……今日、なんか特別な日みたいだね」
茜が、夕焼けに染まる公園でふと呟いた。
学校帰りに寄り道しただけ。
いつも通る道、いつも座るベンチ。
それでも、悟にはわかった。
今日は確かに“特別”だった。
「……たぶん、俺にとっては特別だよ」
「なんで?」
「茜とこうして、自然に一緒にいられるのが……すごく、嬉しいから」
茜はちょっとだけ目を見開いて、すぐにふわっと笑った。
「……悟くん、ずるいよね。そういうこと、普通に言えるところ」
「ずるくないだろ。素直なだけだよ」
「素直かあ……。私も、もっと素直になれたらいいな」
「もう十分、素直だと思うけどな」
そう言うと、茜は小さく笑って、悟の隣にそっと寄り添った。
肩が、かすかに触れ合う。
ドキッ――
悟の心臓が跳ねる。
茜も少し顔を赤くして、けれど逃げずに言った。
「ねえ、悟くん」
「うん」
「今日、特別な日ってことで……」
「うん」
「……手、繋いで帰ろ?」
その言葉に、悟は一瞬で顔が熱くなるのを感じた。
けど、すぐに笑って、そっと茜の手を取る。
「うん、もちろん」
指先が重なる。
それだけで、世界が変わった気がした。
(たったそれだけのことなのに――
俺にとっては、たまらなく特別だ)
ふたりの歩幅が、自然と揃っていく。
赤く染まった空の下、二人だけの小さな未来が、静かに始まった。
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