第3話 バスターと初バトル

 今日も学校から帰ってきた後、暮らしているアパートに帰ってそこで軽食を口に入れた。食べ終わると、制服からゴスロリに着替えてダンジョンへと向かう。

 Cランクダンジョン『第49号ダンジョン』に挑戦することにした。ここでならバスターを初めて使っても問題ないだろう。

 ゲートを通ってダンジョンの中へと入った。ここでドローンを起動させて、配信を開始した。


「こんにちは」


〈こんにちは!〉

〈初見です、バスターって何ですか?〉


 同接数は2だ。恐らくすぐに増えるだろう。初見さんの反応はタイトルに『バスター使います』と宣言している。


「これよ、出てきて」


 私はバスターをダンジョンウォッチのストレージから出す。


「これがバスターよ」


〈大剣を使うんだ〉

〈そうだぞ、それと戦闘になったら覚悟を決めといた方が良いぞ〉

〈? どういうことです?〉


「私は悪くないわ。敵が脆いのよ」


 初見さんには悪いが戦闘になると闘争本能が上がるから。バスターにも声を掛けておこうか。


「今日の狩りの始まりよ」


『そうか。それよりずっと持っているつもりか?』


「? それ以外何があるの?」


『俺は浮くことが出来る。背中に置いてくれて構わない。服は傷付けないようにする』


 便利な機能だな。バスターの言葉に甘えるとするか。俺はバスターを背中側に移動させた。手を離すと本当に浮いているのか地面に落ちない。


〈えっ? 武器が落ちない?〉

〈そういうことが出来るのか〉

〈仕事帰りです。見せて貰おうか、バスターの力を!〉


「さて、行くわよ」


 私はダンジョンを進む。数分経ったらモンスターと出会った。コボルトである。コボルトを見た瞬間、闘争本能が上がってくるのが分かる。口角も上がっているのかな。

 バスターを掴み構える。そのまま突撃して、斜めに体を真っ二つに切り裂いた。


「……呆気ないわね」


 闘争本能が鎮まっていく。体が思っていた以上に素早く動けた。バスター、何かしたの?


『立派な所有者になれるように、アイカが俺の力に適応している。戦えば戦うほど慣れていき、強くもなるぞ』


 もしかしてあの時の流れって、バスターの力なのか。それで私が怠ったらどうなるの?


『そこで止まるな。あくまでアイカの気持ち次第だ』


 努力は必要ね。地道にコツコツ強くなっていきましょうか。


〈真っ二つにしたのは分かったけど、あの笑みはなに?〉

〈アイカはね、バーサーカーなんだよ〉

〈笑みは仕方ないんだ、バーサーカーだから〉

〈戦いを楽しんでいる?〉


 戦いを楽しんでいる、か。不謹慎だけど、そうだな。


「ええ、楽しんでいるわ」


 ダンジョン配信者だからじゃない。純粋にどんなモンスターが出ても笑って戦えているんだから、楽しんでいるんじゃないかな。でも命懸けで倒すよ。


『それで良い』


〈戦いを楽しめるんですね〉

〈頭までバーサーカーになってないか?〉

〈戦いを楽しむなんて、なんて奴だ〉


「進みましょうか、貴方達をもっと楽しませてあげる」


 視聴者を楽しませる為に頑張りますか。


〈これモンスターに向けて言ってる?〉

〈流石に俺達、だよな?〉

〈バーサーカーだからあり得るぞ〉

〈ヒエッ〉




 それからはコボルト狩りだった。複数現れたが、全てバスターの切れ味の前に切り裂かれていった。視聴者も増えていき、初見さんも来てくれて現在の同接数は7であった。


「オークね。しかも複数いる」


 先にはオークが3匹いた。コボルトじゃ今の強さを計れないからな。良い相手になるかもしれない。考えている内にも闘争本能が刺激される。

 オークが私の存在に気が付いた。


「やりましょうか」


 バスターを構えて突撃していく。オークの1体は正面から拳を突き出してきた。私はバスターを突き出して拳に突き刺した。オークは叫び声を上げた。

 2体は私の横に入り、腕を振り下ろした。今の私なら出来ると考えて、バスターを素早く振り回した。オーク2体の両腕を切り裂いた。オークの叫び声がまた上がる。

 私は回るように跳躍して、オーク3体の首を捉える。バスターを横に振り切った。地面に着地するのと同時にオークの首が切り落とされる。そのまま倒れて消滅していった。


〈オロロロロロ〉

〈うわぁ、わぁ……〉

〈何度見ても過激……〉

〈オーク3体を瞬殺かよ〉

〈アイカさん強くなってません?〉

〈流石、俺達のアイカ、戦い方が違う〉

〈あんな動きが出来たのか(白目)〉


 コメントはいつも通りの反応であった。少しの違いに気付いている視聴者さんもいるみたいだ。見てくれているから嬉しい気持ちになる。


「嬉しいことも言ってくれるわね」


 この言葉の反応は何故かハテナで埋め尽くされた。なんで……


「それにしても随分下に降りてきたわね。オーガくらい出てきても可笑しくないかしら」


〈遂に戦ってなくても狂戦士みたいな発言を……〉

〈まぁ、オーガくらいなら倒せるんじゃないですか?〉

〈オーガくらい、オーガくらい?〉

〈オーガ倒したらおしまいかな?〉


 そうだな、オーガを倒したらそこで配信を終了にするか。丁度区切りが良いから。


「そうね、オーガを倒したら――っ!?」


 突如ダンジョンウォッチから警報が鳴った。何事かと確認したら、このダンジョンでスタンピードが起きてしまった。

 スタンピード、それはモンスターが集団となって襲い掛かってくる災いだ。

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