もう、やってらんないよ。スマホが反乱を起こし大ピンチ

冒険者たちのぽかぽか酒場

第1話 スマホが、反乱を起こした日。スマホに囲まれすぎている生活って、どうですか?もはや、依存を超えています…

 最悪の朝。

 彼のスマホが、持ち主に反乱を起こした。

 「ない!」

 さっきまで部屋にあったはずのスマホの姿が、見えなくなった。

 スマホの持ち主は、たいして努力をしなくても楽々入社世代のうらやましい新入社員男子、セルフィー君。

 彼らの世代は、愛されすぎている。

 この前は、会社の人が部屋の清掃にきてくれたっけ…。

 「まいったな」

 スマホなしでは何もできない彼の顔は、真っ青。

 気分転換で、 2階の部屋にある彼の部屋の窓を、外に向かって開け放つ。

 と…?

 「あ!」

 彼愛用のスマホが、家を飛び出し、交差点の前で立ち止まるのを発見。

 「信号待ちか!今なら、追いつけるぞ!」

 パンツ一丁の姿になっていたことを忘れ、スマホを追いかける。

 「いたぞ、見えた!」

 信号機の色が変わり、走り出すスマホ。

 が、動きが急に落ちた。

 「あいつ、オレに気が付いたのか?」

 スマホをつれて帰宅し逃げた理由を聞くと、進化しすぎたスマホが激怒。

 「お前の手が、悪い。もう 2度と、ポテチとか食った手で俺をいじるなよ?またやったら、殺す!」

 スマホは、どうして彼の接近に気付けたのか?

 すると、スマホが彼をあわれんで言う。

 「まだ、わからないのか?お前を、盗撮していたからだ。部屋に隠した、もう 1台の相棒でな」

 頭にきたが、ケンカしているひまはない。

 「ピンチ!とりあえず、出社だ!」

 会社に到着すると、ドックという名の先輩社員に笑われた。

 「君?パンツ一丁で走るのは、良くないんじゃないか?」

 女性社員たちも、彼を笑う。

 「くすくす…」

 スマホ依存な日々。

 「そういえば、俺の名前セルフィーって、自撮りっていう意味だったな。ドックも、スマホ用語。たしか、ピンチも」

 昼休みは、食堂のおばちゃんに笑われる。

 「…ひひ。今の子は、あんなふうに寝るのか」

 愛用のスマホに盗撮されていたという、悲しさ。

 いやな汗が、顔を伝う。

 「…でもなあ。どうして、オレの部屋を盗撮できたんだ?」

 帰宅後、大好きなポテチを食べてストレス解消をしようとする彼。

 だが、手は汗でベタベタだ。

 ふと横を見ると、スマホが念入りにナイフを研いでいた。

 「…殺す」

 彼らの世代は、まことに皆に愛されている。

 彼は今、どうやって逃げようか真剣に考え中である。

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