第6話 「響ク足音、刻マレル揺ラギ」

【早朝・野営地・微かな曇り】


朝露が草を濡らす音が、静かに響いていた。


火はすでに落ちていて、地面には灰の輪だけが残っている。


紫音が寝袋からもそりと出てきて、

春陽が早起きして沸かしていた湯に顔を洗う。


「……ふぃー、冷っ。

でもなんか、気持ちええ朝やなぁ」


春陽がそう言って空を見上げたそのとき、

空斗が測定器を覗き込んだまま、ぽつりと呟いた。


「……少し変動がある」



【移動中・霊圧変動を追って】


空斗の指示で、

3人は第二調査地点から北東へ移動。


建物の残骸と、潰れた水路を超えて進む。


空斗「霊圧の揺らぎが断続的に出てる。

しかも、昨晩より“強度”が増してる」


紫音「自然発生……にしちゃ、周期がキレイすぎるやろ。

これ、何か“発してるもん”がおるな?」


春陽「せやけど……音も、動物の気配もあらへん。

なんか、“生きた空間”やないな、ここ」


紫音「“誰かが魂だけ置き忘れてった”みたいやな……」



【調査中・反応する霊圧】


空斗が測定装置を地面に設置すると、

霊波の記録パネルがピピッと反応し、警告灯が点滅。


「――共鳴反応、発生。外部の霊圧に対して、

“模倣的干渉”が行われてる」


春陽「……共鳴? 干渉?それってどういうことや?」


空斗「例えば、誰かの魂の“音”を真似してるようなもの。

外部から来た霊圧に“似せて返す”ような、そんな歪な仕組みがここにある」


紫音「それってつまり……“俺らの霊圧”にも、

手ぇ伸ばしてくる可能性あるってことやんな……」



【不意に風が吹く】


乾いた風が吹き抜けた瞬間、

空気の粒子に混ざるように、

誰かの“声”のような気配が微かに通り抜けた。


春陽「……今、聞こえたか?」


紫音「……“オマエ”って……言わんかったか、今……?」


空斗、即座に手を振って合図する。


空斗「音波と霊圧の重なり方が不自然だ。

この先、“再構築中の魂”が存在してるかもしれない」



【遭遇・静かに立つ影】


やがて、壊れた街路の先――

そこに“人の形をした何か”が、立っていた。


動かない。霊圧も、ほとんど感じられない。


ただ、霊子の構成が“人間とも死神とも違う”。


春陽「……なんや、あれ……」


紫音「魂……やんな?でも、形が“定まってへん”……」


空斗「模倣体かもしれない。“記録されていた魂”を、

外から取り込んで、形にしてる――そんな可能性がある」


______________________________________


魂の名を奪い、形を借りて、

他人になりすまそうとする“魂の影”。


彼らが相対するのは、虚でもなく、

完全な霊でもない――“魂の模写”。


その正体の片鱗が、今ようやく姿を見せ始めた。


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