灰色の夢

長月将

灰色の世界 プロローグ

 灰色。

 それは一面、灰色の景色。

 何も無く、灰に包まれた世界。

 ここは失われた世界。何もかもが終わってしまった世界。

 僕はこの世界で生きていた。


 ベッドの上を見る。

 君が眠っている。この灰色の世界で、ただひたすらに眠っている。

 僕は待っていた。寝続けている君が、いつか目覚めるその時を。

 この何も無い世界で。この灰色しかない世界で。希望も望みもない世界で。

 君が目覚めるのを、ただひたすらに待ち望んでいた。


 君の顔を見る。

 穏やかな顔。健やかな顔。

 まるで誰かが守ってくれていると信じているかのように。誰かが傍で寄り添ってくれているのを知っているかのように。

 君は知らないだろう、君の目覚めを待つ者の存在を。いつ目覚めるのか知らず焦りを禁じ得ない者の存在を。

 君はそんな者の意に関せず、ただ眠り続けていた。

 

 どれだけ時間が経っただろう。これからどれだけの時間が過ぎるのだろう。

 君はいったいあとどれくらい眠り続けるのだろう。

 この何も無い世界で、僕はあとどれくらいひとりで過ごさなければならないのだろう。


 時は過ぎ行く。残酷のように過ぎ行く。

 それでも、どれくらい時間が経とうとも、僕は待ち続けるだろう。

 君が目覚める日を。また君と共に笑える日を。


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