「倉庫だけで戦えるわけねぇだろ!」→はい、できました

katura

追放された俺、ただの“倉庫スキル”持ちです

「……戦場で役に立たない奴なんて、必要ないんだよ」


 その言葉と共に、俺はパーティから追放された。


 火属性最強の勇者レオン。

 聖属性の回復役ミリア。

 剣の達人ガルド。

 そして、俺──荷物持ち担当、ユウト。


「スキル《倉庫》だっけ? ハハッ、戦えないって自覚、持てよな」


 レオンがあざ笑うように言う。ミリアは目をそらし、ガルドは鼻で笑っていた。


 俺のスキル《倉庫》は、アイテムを無限に収納できるだけの地味スキル。

 彼らのように派手に攻撃も回復もできない。戦場で直接役に立つこともなかった。


「じゃあ、せいぜい……その“倉庫”とやらで、どっかで静かに暮らしてな」


 パーティの紋章が俺の右手から消えると同時に、俺は一人、拠点から放り出された。


 ──でもさ。


(この《倉庫》、おかしいって……やっぱり思ってたんだよな)


 もともと気づいてはいた。

 俺の《倉庫》、普通じゃなかった。


 重さの制限もない。時間も止まってる。

 入れたモノが、時々“進化”することもある。


 試しに壊れかけの剣を入れたら、二日後には“魔剣アスティオン”に変わってた。

 火山の岩を放り込んだら、翌日“精霊核(コア)”って名前に変わってた。


(てことは──)


 俺は一つ、試してみる。


 今、手元にあるのは、かつて勇者たちが「使えない」と言っていた、魔力の流れが詰まった欠陥魔導具。

 それを、倉庫にそっと投げ入れる。


 ──ピンッ。


《収納完了:魔導具【未解析因子:適合】→変換中……》


「……やっぱりかよ」


 その瞬間、俺の中で確信が走った。


 これはただの倉庫なんかじゃない。

 **世界を修復し、進化させ、再定義する“演算空間”**だ。


 三日後。


 封印されていた魔物が復活し、王都が危機に陥ったという報が届いた。


 勇者パーティは壊滅。王女は捕らわれ、王国軍は全滅寸前。

 王都中が叫ぶ──「誰か、誰か助けてくれ!」


 そして、その場に現れたのは──


「その“魔物”、さっき俺の倉庫に入れといたよ」


 笑いながら、俺だった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る