経済学部出身の俺、王国の財政を1年で黒字にする
katura
異世界、財政破綻中。
目を覚ました瞬間、俺は金ピカの玉座の間で、半泣きの王様に頭を下げられていた。
「――お願いです! どうか我が王国を救ってください!!」
唐突すぎて、状況がまったく飲み込めない。俺の名前は相原悠真、21歳、都内の私立大学・経済学部に通う、ごく普通の大学生。
たしかゼミのレポートに追われて、ファミレスで一夜漬けしていた記憶がある。
気づいたら、王様がひざまずいていた。いや、なんだこれ?
「……ええと、俺、なんか間違って異世界に来ちゃった感じですか?」
「そうでございます!! 貴殿を召喚したのは、我が国の財政を立て直す唯一の希望と……聖書に記されておりまして……」
隣の神官が差し出した古びた魔導書には、確かにこう記されていた。
『財政の火、尽きしとき、異界の智を持つ者、白銀の鍵と共に現れん』
……厨二病的な予言は置いておくとして。
「で、今どんな状況?」
「国庫、破綻寸前。軍への支払い遅延三ヶ月。魔法使い組合、ストライキ中。物流崩壊。税収は前年の六割……」
「ヤバすぎる……!」
まさにハイパーインフレの地獄絵図。こいつは大学の演習でもお目にかかれなかったレベル。
「ちなみに、他に召喚された人は?」
「いえ、貴殿お一人だけです。しかも、戦闘能力ゼロのようで……」
「……経済戦争はできるけどね」
俺はスーツの内ポケットから、レポート用に持ち歩いていたノートを取り出す。そこには経済政策の基本、財政バランス、通貨理論、インセンティブ設計がびっしりと書き込まれていた。
これが俺の“武器”になる。
「王様、一つだけ確認しておきたい。俺の提案には、どんなに突飛でも、口出ししないって約束できる?」
「……う、うむ、もちろん! 望むところじゃ!」
「よし、それならまずやるべきは――」
俺は王国の運命を左右する、一言を放った。
「税制改革と中央銀行の設立、だな。」
その瞬間、宰相が卒倒した。
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