異世界でメイドロボを作る
山田ジギタリス
異世界でメイドロボをつくる
「お嬢様! またこんなに散らかして。ついさっき片付けたばかりですよね」
幼い頃から私の世話をしていくれているアンナは美人でスレンダーだけど出るところ出て引っ込むところ引っ込んでスタイル良くて優しくて頭も良くて、なのに一つだけ欠点がある。
私にやさしくない。
今日もちょっと読みかけの本と要らなくなったメモをを床に置いてベッドに寝転んだだけなのに、お説教が止まらない。
確かに自覚はある。でもなぁ、考え事をするとすぐにソッチに夢中になっちゃう。天才と呼ばれる私なので考えることを止めるのはこの国の、いや全世界の損失だ。だから……
「ちゃんと聞いてますか? はぁ、もうお嬢様は」
そう言いながら本を本棚に戻しメモは要るのと要らないと分けて要らないのは火にくべていた。
「あっ、ポールのところに行かないと。じゃ、あとでね」
「あぁ、もう、お嬢様! ナタリー、よろしくお願いしますよ」
ナタリーは護衛の女騎士。寡黙だけど優秀な護衛だ。そしてポールはお抱えの魔道具師。館の敷地内に研究所兼工房を構えていて屋敷で使う魔道具の制作と修理をしている。今はそれに加えて天才アリッサちゃん、私のことね、と共同であるモノを開発している。
「ポールぅ、進捗はどう?」
「…………」
壁に立てかけた黒板を指さすのでそちらを見ると線が引いてあってどうやら順調なようだ。
「さて、自律動作までできたからあとはどうやって掃除を教え込むかね」
「…………」
「なるほど、やっていることを見せながらトレースさせるのね。後は微調整させると」
今度は手元のノートを見せてくるポール。彼はしゃべれないわけじゃなくて、私のような天才美少女の前だと緊張して話せなくなるそうだ。たしかに男性とは普通に話している。美しいって罪だわぁ。あら、ナタリー何か言いたいのかしら。
「いえ、お嬢様、なにもございません」
さて、私が天才なのは生まれつきというか前世からだ。前世、工学エンジニアで主に自律ロボットの研究をしていたリケジョだった。そんな私はちょっとだけ徹夜がすぎて一度家に帰る時に赤信号でふらっと道に出てしまい、気がついたらこの家のお嬢様になっていた。
「…………」
「こういう時のお嬢様は何を言っても無駄ですからできるところを進めておく方がよいですよ」
「…………」
「そうですね、仕方ないですよお嬢様ですから」
「おい!そこの二人! 何か言いたいことあるならはっきり言いなさい」
「天才なお嬢様のことですから長考に入られたら邪魔をしないようにと言っていました」
「あら、わかってるじゃない。私考えてるときに邪魔されるの一番嫌なの。ところで次はこんな感じで組み立ててね、いい?ポール」
今、私がポールに作らせているのはロボット。お掃除をしてくっるロボット。さすがにこの世界では電気は実用段階じゃないからマイクロコンピュータもモーターも使えない。その代わり、魔道具があるからそれを使ってゴーレムを作っているのだ。最初は二足歩行にこだわってみたけど、それより移動方法を簡易化して掃除の機能を優先することをポールから提案された。
ポールの取捨選択能力は確かなので私もそれに賛成してもうすぐお掃除ロボットができる見込みだ。
何で作ってるって? そりゃ侍女のアンナの仕事の軽減よ。そうすればもう少しお話したりお話したりお話したり……♡する時間も増えるでしょ。うん、前世では好きな人、上司の女課長に気持伝える前に死んじゃったからね。今度はちゃんと伝えるわ。
完成したお掃除ロボットなんだけど、アンナを始めとしたみんなにお披露目したのだけど、最初は称賛の目だったけどそのうちに困惑し始めた。
「あの、これできたら、私達お払い箱でしょうか?」
あぁぁぁぁぁぁしまったぁぁ。そうか、これが動くと仕事無くなるから首になると思われちゃうんだ。
「そ、そんなことはないわ、大丈夫あなたたちを首にするなんて考えられないわ。」
明らかにほっとした空気が流れた。
「とにかく、これは私専用だからね、私の部屋にしか使わないから」
そういったとたん、アンナの顔色が変わった。それも一瞬ですぐに元に戻るところはさすがだ。
◆◆◆
夜になり、アンナに手伝ってもらい寝間着に着替える。部屋はいつになくきれいに片付いている。いつもだと私が着替えた後、アンナが片付けるのだけど。なんとなく元気がないアンナが部屋をでる。私はちょっとそれが気になっていたけど、眠気には勝てなかった。
深夜、ふと目が覚めると横にアンナがいた。
「ど、どうしたの、アンナ」
「お静かにおねがいします。幼い頃からお嬢様にお仕えしていましたけれど、近いうちにお嬢様のそばを離れると思うと、いてもたってもいられなくて。どうか一夜のお情けを……」
「まってまってまって、アンナ、私が嫌いになったの?」
「お嬢様を嫌うわけないじゃないですか。でも、お嬢様にはもう私は必要ないと」
「違うわ! なんでそんなことを?」
ちょっと混乱しながら私はアンナを問い詰める。
「めいどろぼ、あのゴーレムはお嬢様専用だと。私がうるさく言うから私が嫌になって、ゴーレムをつくられたのかと」
あぁ、そうか、そうだよね、アンナの仕事がなくなると首だよね、使用人だから。誤解を解くにはどうしよう。ここは女は度胸、据え膳喰わぬは女が廃る。なのでアンナの首に両手をまわして思いっきりキスをした。抱きつくとアンナの胸が私の胸でつぶれる。えへへ、なんなのおっぱい柔らかい。私はへったんこだからなぁ。
最初戸惑っていたアンナだけどそのうちにあっちから舌を入れてきやがった。あ、これ、私がいかされるパターンだ。
予想通り私はアンナに一晩中いいようにされた。
「着替えをお手伝いしたりお風呂でのお手伝いでお嬢様の弱いところはだいたいわかってますから」
そうだね、私はアンナの弱いところ知らないから不公平だ。
「それは、徐々に教えて差し上げますから、お手柔らかに願います❤」
さて、アンナが次に気にしたのは二人が女性同士だってこと。
「あっ、それなら、お母様にお願いして結婚話はみんなことわってるし、お兄様もお婆ちゃんになるまで屋敷にいていいよって言ってくれているから」
「でも、貴族令嬢ですと結婚しないわけには」
「あぁ、それも大丈夫。っていうかアンナも知っているでしょ、社交界での私のうわさ。夫になるとゴーレムに改造されるってやつ」
ため息をついたアンナを慰めるように首筋にキスをする。
「あー、これってあとがのこるやつ。お嬢様ひどいですわ」
アンナの口調が気安いものになってくれる。ちょっとにやけてしまう。
「私のだって印付けたの。絶対手放さないからね、覚悟して」
「それは私のセリフでございます」
二人で顔を見合わせて笑い合う。部屋の中では黙々とめどろぼが掃除をしていた。
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