子供の頃に婚姻届を書いた女の子と再会するが、俺にはもう後輩の彼女がいるのだった

ゆきいろ

第1話女の子と婚姻届を書いて約束する

数年前、俺はある女の子と約束をした。


「嘘ついたーら、針千本飲ーます。ゆびきった」


女の子と小指で指切をして、女の子は指切りをしたら、凄く嬉しそうな顔で婚姻届と書かれた紙を広げると、そこには俺の名前とその女の子の名前が書かれていた。


俺――久堂康弘くどうやすひろはこの春から高校三年生になった。


高校三年生といえば大学受験に追われていると思うが、俺は違う。俺は進学組ではなく、いわゆる就活組。そう、高校を卒業したら大学に行くのではなく就職するのだ。


それに俺の就職先はもう決まっていた。父親が運営している会社の面接を受けて採用を勝ち取った。


コネで入ったんだろうと、他人ならそう思うだろうが。違う、俺は父親に何も言わず。書類選考、採用試験、面接を全て通って実力で勝ち取ったのだ。


まぁ……こんな通学路を一人で歩きながら、今就職の事を頭の中で考えているだけでもつまらないだろう。


「ねぇねぇ先輩――」

「それよりも、今日はあれが届くんだよなぁぁぁ」


ふと今日届く荷物の事を考え始めたら、幸せ一杯で凄くニヤけてしまう。そんな事を頭の中で考えていたら、顔に何かをぶつけられた。


「やっと気付いてくれたぁぁぁ……もう、無視するなんて酷いじゃないですか!!先輩」

「俺は、教科書が数冊入った鞄を人の顔にぶつける方が酷いと思うのだが……」


後輩が持っていた鞄の中に入っている教科書の重みでぶつけられた顔は凄くダメージが与えられていた。


「そんなの知りません、私の事を無視するからいけないんですよーだ」

「あいつ本当に高校生になったんだよな……?」


あっかんべーと舌を出す後輩は、そのまま通学路を走っていく。俺も後を追おうとする。


「ん……?」


近くの公園の木に隠れていた女の子と目線が合う、初対面だが、どこかでみた事がある顔だった。だけど、俺はその女の子には声をかけずに、走って公園を通り過ぎ先に行ってしまった後輩を追いかける。

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