悪役令嬢は婚約破棄されてロボットで暴れます。(自己中)

猫電話

第1話? 悪役令嬢は我儘に!

「レスティア! 貴様自分が何を言ってるのかわかっているのか!」


 私の名はレスティア・フォン・ラルクーラ。

 そして今、目の前にいるこの国の第一王子の婚約者である伯爵令嬢です!

 それなのに、私の事を蔑ろにする王子は、この国に滞在している隣国の第三王女にずっと付きっ切りで接待をしているの!


 王子にとって私は一番でなくてはならない筈なのにです!


「わかっていますわ、ですから何度も言うように何故いつまでも私をほったらかしにして、汚らしい女狐の相手をなさっているのですか?」


 王子は無様にも焦った顔をして、各国の招待客の顔を見渡しているわ。

 そんなに私の尻に敷かれるのが恥ずかしいのなら、最初からちゃんと私の機嫌を損なわないようにしてればいいのです!


「き、貴様のその言葉が、この国を貶めていると何故わからん!」


「何を言ってるのかしら? 私が国を貶める? まさかそんな……ただ本当の事を言ってるだけですわ?」


 王子は私の言葉に本当に焦っているのか、頭から水を被ったような汗を流しながら、会場中の人々の顔色を伺ってる……本当に情けない。


「ほ、本当に、ここまで愚かだとは思わなかったぞ!!」


 何を言っているのかしら? 愚かなのは貴方じゃないですか?

 そう言外げんがいに匂わせて、扇子で口を覆って笑っておきましょう。


「よい、お前は下がっておれ」


 突然横から国王がそう言って割り込んで来た。

 そして愚かな王子を下がらせて前に出て来られました。

 そうですよね? 愚かな王子じゃ話しになりませんよね?


「レスティアよ、いくらおぬしがこの国随一の魔導士であっても、言ってよい事と悪い事がある! ……本当に自分の発言を理解しておらんのか?」


 急に何を仰ってるのでしょうか?

 私は顔を歪ませて首を傾げます。


「そもそも……この会場が、隣国との同盟協定の祝いの場という事も知らんのか?」


 それは異なことを、知らない筈がありませんわ。

 そう思って端的に答えておきます。

 その方が知的でしょ?


「ええ、存じておりますわ「もうよい!」」


 私の答えを遮るように、国王がそんな事を言うので、私は面食らってしまって言葉に詰まりました。


「この女を国家反逆罪として投獄する! それでよろしいかな隣国の姫よ?」

「ええ……わたしは気にしておりませんのでどちらでも……大変ですね」


「何を言ってるの! 私は第一王子の婚約者で伯爵令嬢よ!」


 意味の分からない理由で、私を犯罪者にしようとするなんて、国王と言えども最低過ぎます。

 そんな国王の命令で、城の兵士たちが私を取り囲み、会場から連れ出そうとしてきます。


「貴様と我が息子との婚約は破棄だ!」


 勝手に婚約破棄を決められると思っているのかしら? そんなの暴挙が許される筈がないですわ!


「私の事をなんだと思ってるの! 私は婚約破棄なんて認めないわ!」

「だまれレスティア!」

「え? お父様までなにを?」

「いいからとっとと会場から連れ出してしまえ!」

「お父様!!」


「やめて! 触らないで! 私は伯爵令嬢よ! 痛い! 腕をそんな力で掴まないで! 痣になったらどう責任を取ってくれますの!」


 必死に兵士たちの手を振り解こうとしても、私の力では及ばずに、目の前で会場の扉が閉められてしまいました!

 どういう事なんですの! あの女狐が仕組んだんですわね! 王子や国王、それにお父様まで洗脳しましたのね! 許せない! 許せる筈がございません!


「おい! 魔力封鎖の腕輪を早く付けろ!」


 私の腕を掴む兵士がそう叫びます。

 ああ、そうですわね! まだ魔法を封じられたわけじゃありませんでしたわね!

 んふふふふ!


「は、はい! います、ぐわ!!!」


 私が得意とする火魔法を、この身の全身に発現させて、腕を掴む兵士達を焼き払います。


「レスティア様! 何を!」


 そう叫ぶ、近くにいた兵士にも火魔法をぶつけて燃やします。


「下賤な者達が私に気軽に触らないで!」


 それでもまだ、私の周囲を囲んでいた兵士全てに、火魔法をぶつけて消し炭にします。


「私を陥れる女狐に、支配された王子やお父様、それにこんな国なんてもういらないわ!」


 私を邪魔する兵士は、他にいませんわね?

 ……いないようですので、後は地下の格納庫に向かう事にします!


「はぁはぁはぁ」


 身体強化をした私でも、流石にこの距離を走るのは大変でした。

 途中で何度も、城の兵士に止められそうになりましたし!

 まぁ……全て焼き払いましたけれども!


「ここですわ!」


 この城の地下に、国王や王子の専用巨大ロボットが格納されています。

 でも、それだけでは無くて、国の守護神として代々使えている我が伯爵家の専用機もあった筈です!


「あった!」


 赤黒くフリルの効いた、大きなスカートを履いたようなそのシルエットは、お父様専用というよりも、私の為の専用機ですわ!


「コクピット……高いわね」


 立ったままの姿でそこに収められてるから、コクピットの位置が高過ぎて、このままでは届きません……仕方ありませんから風魔法で行きましょう!


「風の精霊よ! 私をあの赤い巨人の胸元へ運んでちょうだい!」


 火魔法と違って風魔法は苦手ですの。

 だから詠唱が必要なのですが、本当に面倒ですわね。


「よし、では開きなさい!」


 伯爵家の私が、赤い巨人の胸元に手を添えればコクピットの扉は開きますから。


「……早く開きなさい!」


 なによ! 生意気!

 私の物のくせに、私を受け入れないつもり? 焼くわよ!

 私が火魔法を胸元に向けて放出しようとしたら、漸く扉をひらきました。


「はじめからそうしてればいいのです!」


 私はコクピットに体を滑り込ませると、扉を閉めて操縦桿にである左右の宝珠に手をのせます。

 これで動く筈です。


「うごきなさい!」


 私が怒って大声を出さないと動こうとしないなんて、本当にダメな子ですわね!

 まぁいいですわ……さぁいきますわよ!


「まずは、そこの邪魔しそうな機体はいりませんわね」


 横をみて、王子と国王の専用機に向かって私の専用機の手を通して、火魔法を放てば一発です! なにせ専用機を通す事で威力が拡張されますから!


 ズカーン!


 あら? 二台とも弱いですわね……あっけなく爆発しましたわ……。

 まぁいいですわ、今度こそ本当に参りましょう!


「上よ!」


 まずここから出ないといけないのですが……上に乗っかる建物が邪魔です!

 本当なら、ここから真っすぐ前に進んで、庭の中央辺りに外にでる隔壁が有りますけど、めんどくさいのでこのまま上に行きます!


「いっけーーーーー!」


 両手をを上に向けて、私の最大級の力を込めた火魔法を放てば全て溶けてしまいますわ!


 ズガガガガガガガッガガッガ!


 とてつもない大き音を立ててしまいましたが……別に構いませんわね!

 それでは外に出ましょう!


「わたし! 行きますわ!」


 足元に風魔法を発動させれば飛び上がれます!

 しかも専用機にある程度任せれば、詠唱もしなくて済みますので楽ですわ!


「見えた!」


 外に出て直ぐの視界に、お城のバルコニーが見えました。

 丁度、先ほどの会場のバルコニーですわね。


「あらあらあら、みなさん何をそんなに驚かれてるのかしら?」


 バルコニーに、ゴミのように群がってる国王や王子に女狐、それにお父様も見えます。

 けども構いませんわね!


「みんないらないですわぁぁぁぁぁぁぁ!」


 私は、そう気持ちよく叫んで、全力で城を……そして街をすべ焼き払いますの!

 私の事を蔑ろにする国なんて不要ですから!


 ズガガガガガガガガガ!


―――――


 そうして、レスティアは三日三晩かけて丁寧に王都を焼き払うと、満足そうに微笑んだのであった。

 この時、新たな魔王が誕生したのである。

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