パート39: 世界の真実と選択(最終決戦②)

俺の放った、古代魔法の最終奥義。

二つの遺物の力。

そして、俺自身の、世界の法則と対話する力。

その全てが、『滅亡の災厄』が放つ、世界の法則を歪める力と激しく衝突した。


次元空間が軋み、光と闇、秩序と混沌が入り乱れる。

世界そのものが、崩壊寸前のような状態だ。


その力の衝突の中で、『滅亡の災厄』がその真の姿を現した。

それは、単なるエネルギー体ではなかった。

そこには、遥か昔、滅亡した古代文明の全てが記録されていた。

彼らの栄光、彼らの探求、そして…彼らが滅びた、衝撃的な真実が。


その真実が、『滅亡の災厄』から、俺の脳裏に流れ込んでくる。


それは、大災害ではなかった。

異世界からの侵略でもなかった。


古代文明は、自ら滅亡を選んだのだ。

彼らは、世界の法則を超え、さらなる高み…異次元や、概念レベルの力へと到達しようとした。

そのために、彼らは世界と異世界の境界…次元の狭間に、『扉』を開こうとしたのだ。

そして、その『扉』を開くために、彼らは世界の法則を歪め、危険な実験を繰り返した。


『滅亡の災厄』は、その実験の産物だった。

世界の法則を歪め、収集し、記録するための装置…しかし、その力は制御不能となり、暴走した。

『滅亡の災厄』が放つ力の波動は、古代文明の存在そのものを不安定にし、最終的に、彼らを滅亡へと追いやったのだ。


彼らは、自分たちの過ちによって、自らを滅ぼした。

『滅亡の災厄』は、その滅亡の瞬間を克明に記録した「観測者」であり、同時に、その滅亡の原因そのものだった。


真実を知った俺に、『滅亡の災厄』が語りかけてくる(意思があるように感じられる)。

それは、言葉ではない。概念、問いかけのようなもの。


『古代文明は、法則を超えようとして、滅びた』

『彼らの過ちを、繰り返すか』

『世界を、再構築(滅亡)するか』

『あるいは…別の道を選ぶか』


『滅亡の災厄』は、俺に選択を迫っているのだ。

古代文明が滅びたように、この世界を再構築し、全てを無に帰すか。

それとも、この歪んだ世界の法則を、俺の力で安定させ、新たな未来を掴むか。

それは、世界の法則そのものに干渉できる、俺の力によってのみ可能な選択だった。


全勢力…レガリア帝国、宗教組織…は、俺と『滅亡の災厄』の力、そして、古代文明の真実を知って混乱している。

彼らは、遺物を奪おうとしたり、互いを攻撃したり、あるいは恐怖に震えたりしているが、もはやこの最終選択に干渉することはできない。


リリアーナ、ミュウ、シルヴィアは、俺の傍にいる。

彼女たちも、古代文明の真実を知り、世界の運命をかけた選択が、俺に委ねられていることを理解している。


「アルト様…」


リリアーナが、真っ直ぐに俺を見つめる。

その瞳には、恐怖はない。ただ、俺への絶対的な信頼と、共に運命を受け入れる覚悟が宿っている。


「ご主人様…!」


ミュウが、俺の服を掴む手に力を込める。

怖いものと戦っているのは分からないが、ご主人様が一番大事なことを決めているのだ、と感じ取っている。


「…アルト様。最後まで、剣として」


シルヴィアは、無言で、しかし揺るぎない忠誠を改めて示した。

どんな選択であれ、最後まで俺と共に戦う、という覚悟だ。


(別の道…か)


俺は、決断した。

世界の滅亡なんて、面倒すぎる。

ヒロインたちと手に入れた、この場所。

王都での、賑やかな(?)日常。

辺境で助けた村人たち。

エリック爺さんの悲願。


これらを全て無に帰すなんて、そんなバカな選択があるか。


俺は、『滅亡の災厄』に向き直る。

そして、自身の力の全てを解放する。


それは、破壊でも、消滅でもない。

『滅亡の災厄』が歪め、不安定にさせた世界の法則を、「安定」へと書き換える力。

次元空間の歪みを修復し、世界の根源的な理を「再構築」する力。

古代文明が制御に失敗した力を、俺が制御する。


世界の命運をかけた、最後の力を、俺は振るった。

俺の古代魔法の力と、『滅亡の災厄』の力が融合し、次元空間に満ちる。

それは、世界を滅ぼす力ではなく、世界を救済し、新たな未来を紡ぎ出す力だ。


物語の結末。

それは、世界の滅亡でも、創造でもない。

古代文明の過ちを乗り越え、歪んだ世界の法則を安定させ、全ての要素を「継続」させる道を選んだ。


そして、その力の行使の果てに…。

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