第7話 ステンレス鋼よ、世界が変わっても人類の叡知であれ


――――ブレイクのイケメンパワーかくまちゃんグッズプレゼンのお陰か100均は大盛況だ。さらにコーデリアのMP回復も俺のスキル100均を無限ループできてレベルも上がった。


「……でも……私はまだ未婚だからっ」

将来ステキな熟女になりそうなご婦人がくまちゃん柄マグカップを手に取りながら悲しげに呟く。


「関係ありませんよ、あなたは美しい。ただ俺のストライクゾーンが熟女マダムと言うだけ。あなたの人生の選択はあなた次第……何も気にすることはありません。あなたらしく生きればいいのです。そして100均の商品は誰にでも楽しむ権利がある。あなたらしく生きる人生を彩るひとつのピースとなる。それこそが100均なんです」

「……リードくんっ。そうね……そうよね。周りがどんどんと結婚していって、私……焦っていたのかもしれない。そうだわ、気にすることなんてないわね。私には私の人生があるんだもの。リードくんに出会えて嬉しいわ。これ……ちょうだい」

「お買い上げ、ありがとうございます」

キラッ。

俺も完璧に接客をこなしていた。


「なぁブレイク兄さん、リードが新手のロマンス詐欺師に見えて来たんだが」

コーデリアよ。お前は近所のお兄さん俺を何だと思ってるんだ。

「大丈夫だよ。リードは100均と熟女マダムたちへのドル活にしか興味がないから」

うんうん、さすがは俺の幼馴染みブレイク。よく分かってるなぁ俺のこと。


「……リードは、やはり熟女マダムと結婚したいのか?」

何だ?コーデリアったらそこら辺を気にしてるのか?確かにこの世界の結婚平均年齢は低いがコーデリアはまだまだ14歳。さすがにコーデリアのとこのおじさんがコーデリアに縁談持ってきたらコーデリアの母ちゃんのローサにチクるって。それでもおじさんが張り切ってきたら……仕方ねぇ。


――――親父にチクるか。かわいい近所の妹枠のためだ。近所のモブお兄さん枠には時にはやらなきゃいけない時が来るからな。だからそこら辺は心配しなくていいと思うのだが。


「コーデリア。俺は熟女マダムたちを神聖な存在として見ている。それがアイドルと言う存在。アイドルとは神聖なもの。彼女たちが結婚をしてもそれは彼女たちの人生。ファンとしては全力で祝福する。結婚相手がクズだっまらファンとしては全力でデモる。それがファンだ」

※個人の見解です


「だから俺は……彼女たちと結婚したいわけではない」

「まぁマダムって言ってる時点で人妻だろうが」

そうだろう?コーデリア。

「未亡人熟女もストライクゾーンだよね?もとは人妻だったし」

そうだな、ブレイク。しかし俺は彼女たちが亡き夫氏たちを想う気持ちも大切にしたいんだよ。


「でもリードが何を言っているのか8割がた理解できないぞ」

ふ……っ。コーデリアにはまだ早かったか。


「お前が熟女マダムになったら、きっと分かるさ」

「いや……分かりたいわけでは……でもリードのことは……ごにょごにょ」

うん?後半部分が聞き取れないんだが?


「コーデリア?」

「んもぅいい!」

え?何だろう反抗期か?思春期の女子にはありがちだ。12歳で旅に出たんだ。両親に反抗期し出す前にブレイクを追いかけて行っちまったコーデリアだ。反抗期したいのなら近所のお兄さん枠として温かく見守ってやるけども。


「と……取り敢えず、その、商品のことだが。マグカップとくまちゃんや鈴チャームの他には何か作らんのか?」

確かになぁ。同じものばかり売っていても客が飽きてしまう。


「ほかの支店に輸出と言う手もあるが、ここにも新商品は必要だろう」

と、アーノルド。相変わらず用心棒をしているが、街は平和なので商売のことやら商品のことやら色々と教えてくれる。


「そうだなぁ。同じように木製製品を作ってもいいのだけど」

スプーンやフォーク、こちらの地域では珍しい箸など。あそこら辺は装飾にかける費用の余裕もあるからな。普通加工が難しかったり塗装も必要なのだろうが……俺のスキルだと魔力製なので材料費と魔力だけで済むのだ。

しかしながら……。


「金属製が欲しいな」

「金属製だとコストがな」

確かになぁ。鈴チャームなどはこぶりだからこそ、木製チャームや根付けと合わせて100ゴルゴル(税別)に収めることができた。


「それと加工しやすくて軽いのがいいな」

こちらでは銀食器が最高級だが、銀製だし絶対重いだろ。その前にコストがかかりすぎでは?貴族とか王さまが使うもんだぞ。


「ならステンレス鋼はどうだろう」

「す……ステンレス!!」

前世でも庶民の味方みんな大好きステンレス!この世界にもあったのか!


「でもお前、素材として使うには産地に行かないといけないんだろう?なら研修として現地に行かせてもらったらどうだ?」

「研修か……!早速マリアンに頼んでみようっ!あと商品も幾つか作り置きしていかないと!」

100均製品を求めて来てくれたお客がいたら申し訳ないし。


「それなら俺のゲートでいつでもこの店と繋げるよ」

「……え?ブレイク、そんな便利なことできたの?なかなか村に戻って来なかったけど」

「それは……親父が……」

「あぁ……なるりょ」

お前の親父さん、勇者らしさとか男らしさ押し付けるタイプだったもんなぁ……。ブレイクも帰りづらかったのかもしれない。そして師匠に反抗期事件も親父さんとデジャヴったためかもしれない。やはりひとに『らしさ』を求めすぎるのはいけないな。勉強になるな。


――――しかしながら商品を収める手立ては確保できたので、早速マリアンに相談だ。


「そうね……!リードくんはうちの商業ギルドの一員だもの。いろんな土地で勉強を積むのも大切だわ。早速手配してくるわね!」

「ありがとう、さすがはマリアンだ」

「……り、リードくんったら。そんな誠実そうな目で見つめられたら……照れちゃ……」


「おふくろおおおおおぉっ!!!」

かわいらしく照れるマリアン、そしてマザコンを爆発させるアーノルド。研修に出たらこんな賑やかな喧騒とも少しお別れか。いや、ブレイクのゲートでいつでも会えるか。



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