神の野球チームと戦う要員として、悪魔によって改造された高校生3人。常人離れした力を身につけた彼らに悪魔が命じたのは、高校野球の公式戦全勝。ただし、現世の野球の秩序を乱してはいけないという条件つき。その気になれば1000キロ超えのボールも投げられるが、そんな秩序を乱すプレイは当然許されず、真の実力を隠したまま高校野球に挑むことになるのだった……。
悪魔によって無茶な縛りプレイを課せられるという前提の時点で、それ以上に楽しいのがとにかく際立っている3人のキャラ。特にリーダー格であり物語の中心である田中東志がいい。傍若無人な性格と威勢のいい関西弁で他人を煽り、周囲を上手くコントロールしようとするのだが、家に帰ると頭を抱えて泣き言ばかり吐くというギャップがとても愛らしい。ちなみに残りの二人は勉強のしすぎで一般的な常識に欠けていたり、悪魔の改造の失敗のせいで「ぴよぴよ」としか喋れなくなってるので、この東志が3人の中で一番マトモな人物である。
こんな3人が周囲の人間を巻き込んで甲子園優勝を目指すのだが、周囲の人間も肩の消耗を避けるために高校では試合に一切出る気がない天才投手や、世界一の代理人を目指す美少女などいずれも変人ばかりで、彼らが織りなす日常の会話のやりとりがいちいち面白い。
もちろん、ちゃんと野球の試合もするし、悪魔の無茶ぶりに隠されたある秘密によって思わぬ苦戦も待ち構えている。シュールな設定とそれに負けないキャラのアクの強さで楽しませてくれる、コメディ風だけどしっかり熱い異色作だ。
(「球春到来! 野球小説特集!」4選/文=柿崎憲)
この小説は、異世界で野球魔人になった、
高校生たちが、超人的な能力を隠しながら
甲子園5連覇を目指す物語です。
時速1500キロの剛速球を投げられる彼らですが、「秩序を乱すな」という制約があるため、
ただ力で圧倒することはできません。
主人公・田中の卓越した頭脳が、
この作品の最大の魅力です。
彼は「まぐれで勝ったように見せる」ため、
試合の一投一打を緻密に計算し、
勝利への道筋を組み立てます。
スポーツ小説でありながら、
まるで本格的な頭脳戦を読んでいるかのような、
緊張感が味わえます。
野球ファンはもちろん、
知略を駆使する物語や、
ユニークな設定の作品が好きな方にも、
おすすめの一作です。