ぽたり(幻想)

μεράκι(めらき)

ぽたり




ぽたりぽたり


コーヒーをドリップしてる時の

あの水面みなも


なんと美しいことか


ぽたりぽたりがだんだんゆっくりになっていくけれど

味にはトゲが出る


なんとほろ苦いことか


コーヒーをコーシーって言う人もいるけど


なんと可愛らしいことか


コーヒーでもコーシーでも


ぽたりぽたりと


何かがドリップされているようです


そんなこんなでいつもゆっくりドリップできれば良いのですが


時に忙しくすると


時間が気になっちゃいますね


頭の中が

ぽたりぽたりじゃなくて

チックタックに支配されそうです


そんなある時


試しに時間をドリップしてみました


1ぽたり2ぽたり3ぽたり


ああそうか


時間や数で区切っていたのだなあ


ぽたりぽたり


そこには時間が無くなりました


ほほう実に興味深い


じゃあ次は

忙しい

をドリップしてみよう


あちらでぽたり

こちらでぽたり


よく考えてみれば

あちらもこちらも

どちら様なのでしょう


ぽたりぽたり


そこには忙しいが無くなりました


はて、時間と忙しいはどこ行った


その水面みなもにダイブしてみる


ざぶん


ごぼごぼごぼ


...


面白い


過去も現在も未来も


あちらもこちらもどちらも


ぜーんぶ真っ黒で

ぜーんぶ真っ白だ


ここは何の深淵だろうか


その深淵を揺蕩たゆたってみる


すると目の前に1つのコーヒーカップが現れた


そのコーヒーカップに手をかけた刹那


我に返った


いつもコーヒーを淹れているキッチンだ


ぽたりぽたり


まるで服や身体からだから海水が滴るよう


しかし身体からだが妙に軽い


そうか


時間も数も忙しいも過去も現在も未来もあちらもこちらもどちらも


ぜーんぶ幻想だったんだ


幻想という濡れ衣を着せられていたのに過ぎなかったんだ


そこでコーヒーカップの水面みなもをもう一度


ゆーっくりと覗いてみた


するとそこに映るのは


紛れもなく


自分


だった










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