寝てばかり過ごす日々

心夢宇宙

0月0日 何も無い

 ある高校生になって一年を過ごすというゲームがある。そのゲームでは毎日どの様に過ごすかを殆どプレイヤーが決められる。部活をして過ごすもよし。バイトをして過ごすもよし。友達と一緒に過ごすのもよし。家族と一緒に過ごすのもよし。読書をして過ごすのもよし。プラモを作って過ごすのもよし。釣りをして過ごすのもよし。人の頼みを叶えて人助けに走ってもよし。買い物してもよし。通販で物を買ってもよし。勉強して過ごすもよし。強くなる為に戦うのもよし。寝てばかりすごすのも、またよし。

 そういうことをして過ごしながら、大きな事件、謎に立ち向かうという本筋を、春から春までの一年間で体験出来る、そういうゲームだ。

 自分はそのゲームをプレイする時には大抵、一日一日セーブできる日はこまめにセーブをし、セーブスロットがいっぱいになったらバックアップをとってでも全て保存。そしてまた一からセーブし直す。そういうプレイの仕方をしてしまう。


 ───それだのに───


 ゲームではそこまで一日一日を大切にできるのに、自分の人生はどうだろうか。果たして一日一日を大切に過ごせているだろうか。そんな疑念を晴らせるほどハッキリとは、日々を大切に出来ていない気がした。そしてこの感覚が、どう考えても自分だけのものではないであろうという事は、簡単に想像ができる話であった。

 月曜が来て平日。それから金曜まで学校や仕事。人によっては土曜も。最悪日曜も。学生でなく職もない人──所謂ニート──だって、それはそれでやはり同じ様に、ただ暇つぶしなどで時間が過ぎるのを待っているんじゃ無いかと思われた。

『人は一日一日を大切にできないのかもしれない』。そんなバカでかい主語の観念さえ湧いてしまう。だが一方で『自分はそうではない』という人もいるのだろう。──それが真実かどうかは兎も角として──


 件のゲームでも毎日寝てばかりして過ごす事が可能で、その場合登場人物全員との関係性が進展しないし、彼らの抱く悩みや葛藤に触れることもなければ、その解決の手助けをすることもできない。人間的魅力の上昇もゆるやかであり、出来ることは限られて、お金もあまり貯まらず、事件や謎の真なる部分に触れることさえ出来ない。何も無いのだから仕方ない。


 ──何も無い、か──


 そのゲームはアニメ化されているのだが、そのアニメを思い出す。主人公の人間的魅力が、五つの言葉によって表現されて、五角形のグラフ(レーダーチャート)によって表現されているのだが。そのアニメ版では、それが全て『無』の人物が────


 そこまで考えて、激痛。頭がゴリゴリガリガリピキピキと鳴って、経験したことのない痛みが



 気づくと自分は、白や灰色だけの空間に座っていた。視界の上端に、何か動くものがあったから、釣られてそちらに顔を上げる。目の前に、光があった。光の塊が。


「やりなおしたいですか?」


 自分は苦笑。


「転生ものみたいに?」

「ええ、そうです。どうですか?」


 自分は───


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※当連載もフィクションであり、実在の人物、団体、宗教、その他あらゆものとは一切関係がありません。

※あと自分の連載は全てフィクションでございます。それはこの記載がない連載についてもそうなのです。誤解なきよう。それだのに───

※登場人物の考えが作者の考えであるとは限りません。

※当連載も私之プロフィールは『登録サイトサービス一覧』等に記載されているwebサイト等で同時掲載されている場合があります。それ以外のwebサイト等には掲載・投稿しておりません。

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寝てばかり過ごす日々 心夢宇宙 @kokoroyume-iesora

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