Episode.4...雹雪のナイトグライド.
由真は、弁護士という道を捨て、今はフリーターとして日々を生きている。その姿にはかつての栄光の影が見え隠れしながらも、彼女の言葉はどこか刺さるような鋭さを持っていた。「手がほどけても、ぬくもりだけはあったのかもね」。彼女の声は冷たい冬の日の空気に溶け込みながら、胸の奥に静かな痛みを残した。
「君にAshを壊せるだけの記憶を作ろう」。彼女の言葉は、まるで燃え盛る炎の中に立つような力強さを持ちながらも、その炎の先には無数の暗い記憶が形を失って漂っていた。黄金も、夢も、すでに手からこぼれ落ちた彼女の心に宿る意志——それだけを頼りに彼女は歩む。栄光の証を求めながらも、その証を越えるための境界を軽やかに滑っていく。雪の音が遠くに聞こえたその瞬間、「消えないで」という祈りのような言葉が空へと漂う。
寒い日の中で、僕らはただ互いのぬくもりを確かめることに専念していた。それだけが唯一の光のようなものだった。しかし、そのぬくもりは、選ばれなかった彼女の背中を静かに追いかけることにしかならなかった。イリアを選んだあの日、由真は文句ひとつ言わずに身を引き、その鋭さの中に静かな優しさを隠した。
由真を選ばず、イリアを選ぶという決断。その瞬間に感じたのは、暖かな希望ではなく、冷たい雪のような痛みだった。由真の言葉が胸の奥で再び響く。「君と永久に」。その言葉の中には、選ばれることのない彼女が示す永遠の静寂が存在していた。由真の背中を見送る僕の心は、彼女の選択と彼女の迷いが交差する場所に留まり続けている。彼女が選んだ道の遥か先で、雪は消えずに降り積もるばかりだった。
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