第6話『謎、謎、謎?』
「はい。これで正式なパーティー登録完了ですねぇ~。構成メンバーはS級冒険者であるステイン・ベーシカルさんと、D級冒険者のリペル・スーカドッデさんの二人。パーティーランクは、本来ならステインさんの今までの活躍もあってA級・・・・・・ですが、危険極まりない未知の術がステインさんに掛けられていることを考えて、特別A級指定とさせていただきますぅ~」
女ノームの受付に差し出されたパーティー証明書類を見る。確かに、俺の名前とリペルの名前、種族、生年月日、性別……つまりは個人情報がきちんとが書かれていた。
「ありがとうな。じゃ、またすぐ仕事受けに来るよ」
「あの、ステインさん。なんなんすか、この特別A級の、特別って」
リペルが、書類に書かれた特別の文字を指さした。
「ああ、確かにあんま知られてないよな。通常のパーティーランクはS、A、B、C、Dの五種類だけど、特殊な技能に特化していたり何らかの事情で自由に動かせなかったり。そういう時に特別を付けることで単純な実力や信頼以外の要素を複合させることができるんだ・・・・・・まあ大抵の人間は単純なランクに入れられるから普通は知らないさ」
「な、なるほど! ありがとうございます!」
「別にこんなことで一々感謝しなくてもいいよ。俺達仲間なんだしさ。敬語も別にしなくても」
「いや、そういうわけには・・・・・・単純に、偉大な先輩ですし」
「むう」
正直、壁を作られているようで寂しい。俺を嫌っているわけではないだろうし、リスペクトしてくれていることはわかるのだが……歳の差も一回りほどあるし、すぐになじむというのは難しい話かもしれない。
「で、私たちはどの仕事を受けるんすか? 薬草採取、魔物討伐、商人の護衛。色々あるっすけど」
「いや、悪いがもう一軒行かなきゃいけないとこがある。例のブレイズドラゴンの件で、もういっぺん事情聴取をやってほしいって言われていてさ」
ドラゴンは本来、人間がほとんど住んでいないような過酷極まる地で生態系の頂点として暮らしている。ブレイズドラゴンで言えば一番近い住み家ですら、ここからは2000㎞は離れているはずだ。
それなのにもかかわらず、ブレイズドラゴンがマヤノ林山に前触れなく現れるなど異常だ。
「まあ無いとは思うが、またドラゴンが出てきたら困る。王国の正規軍や中央ギルドと連携を取って……」
俺の言葉はそこで途切れた。
バン! とギルドの奥から扉が開かれる大きな音が聞こえたからだ。
「失礼します! 私、ジツシ・メーシープ、ホーリーベル家より参った者です! 回復術が使える方は……回復術が使える方は今すぐにチミオオ街道に集まってください! お願いします!」
若々しく、背の低い男だ。綺麗に整えられた短髪と皺の無いスーツからは、彼の几帳面さが伝わってくる。
俺は青年に見覚えがあった。確かヒルリアの家に居た、若い執事の一人だったはず……。
「お嬢様を……どうかお嬢様を……あ、ステイン様! 今すぐチミオオ街道へ来てください、お嬢様が、お嬢様が!」
若い執事は、錯乱した様子で俺の元に駆け寄ってきた。
「落ち着け。俺は魔剣士だから、回復術などできないぞ……それより何があったんだ? ヒルリアがそこまで酷い怪我をしたのか?」
珍しいことではない。勇者パーティーのサポートの全てを担っている彼女は、アイウェの次に狙われやすい立場だ。
俺が居なくなり、パーティーの前衛が減った今、多少の戦力低下は確実だったろうが……。
「でもアイウェだって相当の回復術を使えるし、そもそもホーリーベル家は回復術の名門のはずだろう? 一般の雑用ですら王国立学院の教師をやれるほどの――」
「いえ……我々の回復術だけでは、足りません。
「ちょっと待て、アイウェやヒルリアの回復が期待できない?」
そんな馬鹿な、どれほどの激闘が有ればそんな惨事が起きるというのだ。
「あいつらに……あいつらに、何が起きたんだ!?」
「……勇者パーティーはチミオオ街道にて魔王軍四死柱が一人、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます