変なものが浮いている

AIRO

変なものが浮いている

高校生になったばかりの私には、ある””がある。


私は、その悩みを小学校から一緒のミユに相談した。


「ねぇ、聞いて欲しいんだけどさ」


「どうしたの?ユウ、そんな暗い顔して」


「お風呂って何番目に入ってる?」


「私は別に何番目でも〜、あ、でも、お父さんの後は嫌だから、お父さんよりは先かなぁ」


「なんで嫌なの?」


「えー、そりゃ嫌でしょ!ユウは嫌じゃないの?」


「私も、お父さんの後は嫌かな……だって、なんか変なの浮いてるし」


「あはは、やっぱそうだよね。私も別にお父さんが嫌いって訳じゃないんだけどさ、なんでだろうねー」


私の最近の悩み。それはお父さんの後に、お風呂に入ること。

ミユに話を聞いても変なものが浮いているらしい。

家に帰り、お母さんにも相談してみた。


「あのさ、お父さんの後にお風呂に入ったら、なんか浮いてない?」


「えー?そんなもの見たことないけど、お父さんの後にお風呂入りたくないってこと?」


「いや、そういうわけじゃ……」


お母さんも見ていないらしい。


悩みができてから、日常生活に変な違和感を感じるようになった。


「あれ?また無くなってる……」


小物などの私物が無くなっていたり、置いたはずのないところから出てきたりするようになった。


しばらく、お風呂は一番に入るようにしていた。

変なものを見なくて済むし、とても快適なバスタイムだった。


ある日、珍しくお父さんとお母さんが旅行に出かけると言ってきた。

一泊してくるだけだから、私一人でも大丈夫かと聞かれたけど、もう子供じゃないんだから大丈夫だと言って、両親は出かけて行った。


「急に旅行なんて珍しいな。平日なのに」


家に一人でいるとなんかワクワクする。一人暮らしってこんな感じなのかな?なんて一人でニマニマしていた。


そんな時——、スマホが鳴った。


「もしもし、お母さん?どうしたの?」


「あ——、ユ……あの——」


「え?何?全然聞こえないよ?」


「もし——、もし……また……、けなおすね」


電話を切られてしまった。


「何かあったのかな……」


心配で一人を満喫できる状態ではなかった。いつ連絡が来るのか分からないし、不安で眠れずにいた。


深夜2時、お母さんから連絡が来た。


「もしもし、ユウ?」


「お母さんどうしたの?心配してたんだよ」


「ごめんごめん。旅行先でお父さんケガしちゃってねぇ。病院にいたんだよ」


「え!?大丈夫なの?」


「だーいじょうぶ、大丈夫。帰り次の日になりそうだけど、大丈夫?」


「それは大丈夫だよ」


お父さんが病院にいるって聞いた時は、一瞬頭が真っ白になった。


「大丈夫そうで良かった」


安心したのか電話が終わった後、私はすぐに眠りについた。




——次の日。


お父さんとお母さんは無事に帰ってきた。


「もう心配したよー」


「あはは、いやー俺も歳だねぇ」


「そうねぇ。そろそろ色々考えなきゃね」


「老後のこと?」


「そうだな。これからのこと考えないとな」


病院に行ったと聞いた時は、どんなケガをしたのかと心配していたが大したことは無さそうだった。


「どれ、疲れたから風呂に入ってもう寝るよ」


そう言うと、お父さんはお風呂に向かってしまった。


「あ……」


ここ最近、お父さんの後にお風呂に入っていなかった私だが、疲れていると言っていたお父さんを止めることは出来なかった。


「ユウは?お父さんの次?」


「いや、お母さん先にいいよ」


お父さんの後に入ったお母さんも、何事もなくお風呂から出てきて、私の番になった。


私は、真っ先に浴槽を見た。


「何も……ない、か」


何も無いことを確認してから身体を洗い、湯船に入った。


「ん?」


やっぱり何かある。私は覚悟を決めてを掴んだ。


「ぎ……ぎぎ……ぎゃああああああああ!!」


パニックになった私はを掴んだまま、タオルを巻くことも忘れリビングへと向かっていた。


「ちょっとお父さん!何これ!」


「ん?ブハッ!ユウ、お前なんて格好で——」


ビールを吐き出すお父さん。


「なに!?どうしたのユウ!?」


何事かと驚くお母さん。


すっぽんぽんの私。


「え?あ、ぎゃああああああ」


裸だということを忘れていた私は、をお父さんに向かって投げつけた。


「あれ?これは、お前見えてたか?」


「いえ……もしかし今までユウが言ってた変なものって……私はてっきり」


「てっきり?」


「あ、いや。なんでもないですよ」


急いで服を着て、何やら話こんでいる両親の元へ急いだ。


「で?これはなんなの?」


「うむ。これは低級霊ですな」


は?めちゃくちゃ真面目な顔をして話すお父さんに何からツッコんだらいいのか分からなくなってしまった。


「いやぁ……ちゃんと除霊してきたと思ってたんだけど、霊気が弱すぎる低級には、もう反応出来なくなってるみたいだ」


「私も、気付きませんでしたよ。ケガした原因はこの低級霊の仕業ね」


何の話をしているのか私にはさっぱり分からないのに、どんどん話を進めていく両親。


「ユウも視えるようになってたんだな」


「早いですね。私たちより霊感が強いのかもしれない」


開いた口が塞がらないままでいる私に、両親は真面目な顔して話をしてきた。


”家業について”


私の家系は、昔から陰陽師として霊的な問題を解決することを生業としているらしい。でも、普通の生活も出来るように生まれつき霊感が無く、霊が見えない家族には秘密にするという約束があるんだとか。


お父さんは会社勤めのサラリーマンだと思っていたけど、あれも嘘だったらしい。

お母さんと二人で陰陽師の仕事していたが、歳のせいもあってか最近は手こずっていたという話だった。


——


「あれ?ユウ。なんか今までより明るくなった?」


「え?そうかな?」


「お風呂問題は解決できたの?」


「いやー問題は山積みですけど、親子関係は良好だよ!」




あの日以来、私は陰陽師としての仕事を両親から教わっている。

学校に行きながら修行というわけだ。




あなたのお風呂に何か浮いていませんか?

この、女子高生陰陽師が除霊しに行ってあげますよ!

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変なものが浮いている AIRO @airo210

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