第18話
その日の授業がすべて終わり、ぞろぞろと生徒が校舎から出てくる。カテルナとエルナもそれに混じって表へと出た。道なりに植えられた木々が風に揺れてざわめき、まだ辺りには鐘の音が響いている。
身体の割に大きな鞄を担いているカテルナが道の真ん中を歩いている。エルナはカテルナの歩調に合わせるようにゆっくりと歩く。
「――今日も夕飯の買い物に行くの?」
「うん。カテルナさん、今日は何が食べたいですか?」
毎日買い出しにいっているのだろうか。寮で出る食事でもいいと思うのだが、どうやらエルナは料理を作るのが趣味らしく、カテルナは深く追求はしなかった。
「エルナの作りたいやつでいいよ」
「それじゃ、今日はオムライスかな、今日はたまごが安売りなの」
うっとりとした表情で、財布を握り締め、エルナは甘い息を吐いた。たんにショッピングが好きなのかも知れない。
「私はいくらくらい払えばいいのかな?」
昨日の夕飯は結局、歓迎という事で奢ってもらう形になった。今日からはカテルナも食費の半分を持つことに決めたのだ。
「買い物終わってからでいいです。いくら買うかなんて考えてないですから――カテルナさんもいっしょに行きますか?」
「あ、私はちょっと調べたいことがあるから、ごめんだけど一人で行ってくれる?」
――カテルナには早急にやらなくてはならないことがあった。そもそもカテルナはそれをするためにこの学園に入ったのだから。
「調べたいこと?」
「うん、ちょっと図書館でね」
「図書館だったら、こっちとは逆方向ですよ。あっちに屋根が緑色の塔が見えるでしょう?あの塔の横にあるのが書庫ですよ」
そう言ってエルナが真後ろを指差した。
「うん、わかってる。――エルナ、列車の時間は大丈夫なの?」
「まだ余裕があります。じゃあ、カテルナさん、あまり遅くならないようにしてくださいね」
「エルナも痴漢に気をつけるんだよ。触られたらすぐ殴るんだよ。頭突きでも可」
「はい。善処します」
エルナはニッコリと笑顔を返した。
「それじゃ、またあとで」
二人はそれぞれの目的地に向かって別れた。振り返るエルナが少し残念そうに表情を曇らせていたことを、書庫に向かって走るカテルナが気付くはずもなかった。
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