戦乱
良い時代、のはずだった。なにが起こったのか、よくわからない。
天変地異?そうだったのかもしれない。気が付けば、食べるものに困るようになっていた。それは戦の火種となる。
戦は、怒りに身を任せる者たちにとっては、敵味方の区別は明らかなのだろう。しかし、そうでない者たちにとっては単なる災いでしかない。田畑を持つ者はもちろん、牛馬を持つ者も生きる糧を失う。
そして、武具を作る者もその技術以外のすべてを失う。武具だけではない、権力の象徴となるものを作り出す者は、敵味方関係なく連れ去られるか集落に閉じ込められた。征服者が必要とするものを作らされるのだ。その技術のない人々は、つまり多くの女子供と老人は、必要ないとその場で殺されるか、抵抗を阻むための道具として使われた。
戦乱の足音が近づいたとき、人の判断はさまざまである。
運よく災禍が素通りするのではないかと期待する者、近場に身を隠しておけば大丈夫だろうと判断する者、その場を離れることを決断する者・・・。
どうすれば、命を永らえることができるのか。
海の近くに住む人々や海へたどり着いた人々の一部が、海へ逃れるのは当然だろう。安全は保障されない、しかし自分たちに襲い掛かる集団がいないことも明らかなのだから。
「そうしてね、たくさんの人たちが海へ出たの。海はね、大きくて深い水たまりなの。大きな大きな、深い深い池より大きくて深いの。本当は、陸から離れるつもりはなかったのかもしれないし、海の向こうに陸があることを知っていた人たちもいたかもしれない。でも、見て?水たまりに草船を浮かべて波を立ててごらん?ほら、そんな風にひっくり返ってしまった船もあったでしょうね。」
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